べるーし

鉄砲玉の美学のべるーしのレビュー・感想・評価

鉄砲玉の美学(1973年製作の映画)
3.9
恐らく世界一ダサいヤクザ映画(褒め言葉)

意図が滑ってダサくなったのでなく本当に意図してダサい。が、ある意味任侠映画への反旗的な立ち位置の作品として中々エポックメイキングで、ヤクザ映画が好きなら観て損は絶対にない一本。

ただ、よくあるヤクザ映画とは違い、群像劇とも言える組同士の明確かつややこしい対立や凄惨な暴力描写は今作にはなく、貧乏な青年が大金に釣られてヤクザのヒットマンになるも活躍せず不幸な目に遭うという、アメリカンニューシネマな内容が面白かった。その上ヤクザの親分は声のみ登場で、終始主人公がダラダラしてるだけしているのも他ではまず観られない、エポックメイキング足らしめているポイント。

ダサさを描くのに注力し過ぎて正直退屈ではあるが、渡瀬恒彦の節々の行動が貧乏過ぎるが故に異次元なのが笑える。公衆トイレに自ら描いたヘタクソなヌードの絵で自慰をおっ始めたり、こりゃゴダール映画のベルモンドもビックリだぜ!

ウサギが捨て野菜を食べるかと思えば汚らしく肉を食う人間の口元のクローズアップのインサートを挟むなど、搾取を兎に角象徴的に皮肉っているのも頭脳警察によるクソ酷い歌詞の名曲「ふざけるんじゃねえよ」が延々流れたりと全て前衛みたいな映画ですが、そりゃあATGですもの。

好き放題(内情は意外にそんな事なかったらしいが)かつ前衛的なのが楽しいヤクザ映画でした。
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