アリスは子供部屋で退屈していた。
その時、ガラスケースの中の置物のウサギが動き出し、ハサミでガラスを割って出ていくのを目撃する。
正装したウサギは懐中時計を見て“大変だ、遅刻するぞ”とつぶやいていた。
ディズニー映画などでも知られる『不思議の国のアリス』のダークサイド版。
役者は女の子1人で、それ以外は人形などのアニメーションという不思議な映画。
よく教育テレビなどで人形劇やクレイアニメやってると、思わず見入ってしまうという人は楽しめると思います。
実写とパペットアニメーションで表現される壊れた玩具じみた世界観は、可愛らしく装飾されたディズニーのアリスよりも原作の雰囲気に近いと感じる人もいるのでは。
なんとも奇妙な空気感な1枚。
そんな感じでディズニーのアリスとは一味も二味も違うのだ。
手作り人形のアニメーション、少女の無表情な演技、毒々しい色彩。
コマ撮りならではの、微妙に怪しい動き。
コマ送りをしているようにぎこちない動きをする奇妙なオブジェたちが悪夢の世界に跳梁跋扈するさまは、非常に不気味でかつ面白い。
ウサギのぬいぐるみを筆頭に、魚の骨の模型、カエルの人形、靴下の芋虫、ネズミのぬいぐるみ、トランプたちが、それぞれこの不思議の国を彩り、シュールな独特の世界観を築いている。
特にインク、タルト、缶詰、キノコ、紅茶、バターなどといった、食欲、飲食に関するモチーフが全編に散りばめられ、それが殊更に気持ち悪い印象を付与している。
だが、まずそうなのだが妙に美味しそうで、食べたくて仕方がなかった。
シュールでグロテスクなちょっとしたホラー映画。
映像全てにおいて美と醜を併せ持つ独自の世界観は、シュヴァンクマイエルならでは。
特に音に対してのこだわりを強く感じる。
作中ずっと響いてる時計のチクタクチクタク…の音が静かで怖くていい。
ハサミで物を切る際のジョキンッと鳴る音など、どれもが耳に残る。
なんかもう癖になる音で何回も聞きたくなる。
不気味ではあるものの、アリス役の女の子が可愛らしいので見事にバランス取れてる気がします。
見た感じは7、8歳ぐらいで、ふんわりとした金髪に大きなグリーンの瞳が特徴的な、恐ろしく可愛い子だ。
まさしくそれは、絵に描いたような金髪幼女であり、近代映画史上5本の指に入る美少女子役と言って過言ではない。
映画というか不思議な映像を見ている感じなので人によって全く感じ方が違う、好き嫌いがハッキリ別れそうです。
果たしてルイス・キャロルが描きたかったアリスとはこういう世界だったのか?
もともと難解なアリスですがさらに難解になってる。
実は読み方次第では原作の方がグロテスクなのかもしれない。
ただちょっと残念なのが、チェシャ猫が出てこないこと。
この監督がチェシャ猫をどう撮るか、かなり楽しみにしてたんだけどなぁ。
まぁとにかく、下手なホラーより怖い。
お子様は観ちゃだめ。
観ちゃだめだよ。