しゅん

宗方姉妹のしゅんのレビュー・感想・評価

宗方姉妹(1950年製作の映画)
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高峰秀子のキュートさが序盤から際立つ。舌を出すタイミングが最高にかわいいし、笠智衆とのやりとりはかなり笑える。
高峰演じる満里子は新世代を象徴した、高飛車で生意気、流行好きで欧米に憧れるキャラクターなのだが、突飛なところは意外と少なく、むしろその場その場で自らの役割を見極める知性の高さを感じる。姉のかつての恋人田代とのやりとりで、弁士風に「〜する満里子なのであった」と語る場面にそれが顕著。姉を愛してるのかと田代に聞き、応えのないままタバコを差し出された時に「彼は買収しようとした、彼女はそれを拒んだ」と言ってタバコを投げるあたりなんかすごく素敵なシーンなんだけど、要するに自分をしっかり客観視している。

対して、旧世代の象徴である、田中絹代演じる姉節子の頑なさは自ら不幸を招きつつ周りの人間も振り回していて苛立ちばかり先行する。新旧の価値観の対決というテーマも、彼女の愚鈍さの前では霞んでしまう。特にラストの結末には暗澹としてしまった。夫からかけられた呪いを正当化する選択はとてもハッピーエンドとは思えないし、宿命を受け入れる女の潔さとも受け取れない。小津映画の美学を持ってしても納得できないものがある。むしろ美しい映像演出と朗らかな音楽が悲惨さを際立たしている印象すらある。最後、満里子が節子を受け入れるのもご都合主義に思える。演者が悪いと言うわけでなく、新旧の対比が脚本の時点で上手く活きていないのだ。

小津独自の低い位置の固定カメラは今作だと高峰の動きの多さと対比されていて、ほかの小津作品にはない効果が出ているように感じた。それ以上に好きなシーンは寺から移動する宗方姉妹をロングショットで撮るところで、パンが振られてから映る大木には異様な迫力がある。

しかし、書く前はこんなに厳しい感想にするつもりなかったんだけどな。好きなところはたくさんあるし。よっぽど終わり方が気に食わなかったんだろうな。
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