龍星

パーフェクトブルーの龍星のネタバレレビュー・内容・結末

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ずっと気になってたけどサブスクにない…と何年も先延ばしにしていたところに期間限定上映があったので飛び込みました。
アイドルから女優へ転身した未麻だったが、女優としての彼女を認めない謎の人物から嫌がらせを受ける。そのうちに彼女の日常もが変化していく…という話。(あってる?)
自分が生まれる前の映画なんだけど、まず本当に絵がキレイ、美麗で。キャラクターが生きているように動くし、いろんな描写が繊細だった。血しぶきとか。あと音響の煽り方がすごく効いてて、未麻の不安が画面から噴き出してそれに呑まれてるような気持ちになった。一番演出面ですごかったのはあまりにもシームレスな場面のつなぎ方だった。一番初めのライブ場面とアイドル卒業後の未麻を交互に映すシーンとか。あと、未麻がドラマ撮影と起床を繰り返すシークエンスとか、ME-MINEを殺してしまう~ルミちゃんと現場に行くけどME-MINEが居ない流れとか、何が本当で何が夢なのかわからなくなって、より不安が襲ってくるのと同時に、ある種のアトラクション的に機能して先の読めなさを楽しんでしまった。
ストーリーは「自分が思い描いてて、近づき始めた理想像」と「かつての自分でありながら、他人が今の自分に求める虚像」の意図せず獲得してしまった二つのアイデンティティに未麻が翻弄される話なんだけど、誰もがスマートフォンを持って、SNSを使って世界中に自分を発信し誰かに自分じゃない自分を見せることが容易になった現代では、誰にでも起こりうるという恐ろしさがのっかったように思う。誹謗中傷もそうだけど、アイドルやインフルエンサー、その規模じゃない知り合いでさえ自分に求めてる像があって、それが表面化しやすい時代だと思うので、よりこのメッセージ性が強くなっているように感じた。あと、「他人が今の自分に求める虚像」と書いたけど、これは「幸せを感じていられた頃の自分」でもあると思った。未麻がいなくなった後のCHAMは順調だし、彼女もカラ元気的に女優の仕事を頑張っているように見えた。他人だけじゃなく、自分も心のどこかで(あのままアイドルを続けていたかった)と思う節があったようだった。初めの方で金魚が死んだのは、彼女が自分自身を押し殺してしまったことの暗喩にも感じた。そういう構造になっているであろう芸能界が、最近の報道と相まってより恐ろしく感じた。ある意味でルミちゃんはリミッターこそ外れてしまったけど、”自分”を殺してしまう未麻に対して助けてあげたい気持ちが人一倍強かった人とも思えた。こういう別々の考え方が出来るから、最後の「私は本物よ」は、「女優としてやっと花開けて、世間からの評価も得て、なりたかった自分になれた」なのか、「どこかで助かったはずの自分を殺した”女優としての未麻”がすべてを掌握してしまった」なのかわからなくて、怖いまま終わった。爽やかに見せているところもひっくるめて、恐ろしい映画だなと思った。観れてよかったけど。あと、これが初めての今敏映画だった。最初でよかった。
龍星

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