龍星

シンデレラの龍星のネタバレレビュー・内容・結末

シンデレラ(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

授業の一環で鑑賞。
ストーリーは皆さんご存知、継母や義姉に悩まされながら、王子との恋に奔走するシンデレラのお話。
白人ではないシンデレラ像や、民衆の人種の多様さを売りにしてはいるものの、あんまり入り込めなかった。白人以外の人種のシンデレラを出すことの意味を考えたときに、メタ的な構造を暗喩するかのように、彼女がこれまでのシンデレラより酷い目にあってしまう、とかができたはずなんだけどそういったことはないし、何なら自分が今まで観たシンデレラの中ならかなり継母たち優しめ。民衆も確かに色んな人種の方いるけど、アジア系全然いなくない?ってなってしまった。時代や舞台が違うんだからアジア系いなくて当然だろ!って声に対しては、ならエレキギターが出てくることも80年代ヒット曲の「Material Girl」が歌われることもないだろ!で返します。カメラワークも、ロー・ハイアングルを活用しないでほとんどミッドショットなので、キャラクター間の権力の差、力の差が見えにくく、ある意味で“ピクチャー的”でした。個人的に、ミュージカルとして往年のポップス・ロックス使用はすごく好きなんだけど、どのミュージカルシーンも物語のラインからは隔離されてて、歌ってる間に場面の移動とか関係値の変化とか全然なくて、これもさっきの“ピクチャー的”と似てて、往年のヒット曲をカルチャー、酷い言い方をすると客引きパンダ的に使ってる感じがしてしまって残念だった。ストーリーも、各キャラの心情の変化や成長の描き方が突拍子なく感じてしまった。王様とか特にわけわからん。やりたいことはわかるし、現代的だと思うけど、どうしても中途半端だった。
逆に好きなところもある。さっき書いたヒット曲の採用は、場面が微妙でもやっぱり湧いてしまうし、各キャスト歌がめちゃんこ上手いので「歌」に絞ると本当に良かったなと思う。カミラ・カベロホント歌上手すぎ。本業だからもちろんだけど鳥肌は結構たった。継母の描き方も好きだった。これまでの勧善懲悪の価値観で描かれる悪や欲の権化ではなく、挫折の末にイヤミでいざるを得ない、シンデレラの失敗を心からは望まないという。私は人間の善悪はきっぱり分かれるものでも、片方しか持たないものでもないと思ってるのでここが特に好きでした。
これは授業の中で先生が言ったことだけど、ファビュラスゴッドマザーがLGBTQだったことも、本来のLGBTQ是正の意味と相殺されてしまっていると。妖精という、周りとは違う、特異な存在のキャラクターがLGBTQ、かつ他の(人間の)キャラクターにはそれがいないという状況なので、妖精=特異=周りから浮いている、別の存在という意味が出てしまうという話でした。納得してしまったし、やっぱだめじゃねえかとなった。もっと丁寧な作品観たかったかもな〜…。
龍星

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