未島夏

パーフェクトブルーの未島夏のレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
3.9
娯楽作品として事件解決までの道筋や犯人判明にしっかりとカタルシスを感じさせながらも、物語に没頭する観客をいつしか主人公が体感する現実と虚構の区別のつかぬ螺旋に陥し入れる。

犯人にとって犯行動機となる心理が、皮肉にも主人公が抑えてきた退行的感情と合致し具現化する事でもう一人の自分を「理想」という名で作り出す。
周囲の為に自分を必死に偽ってきた主人公がもう一人の自分を追いかける姿には、手を差し伸べたくなる様な苦しさを感じずには居られない。

そしてその姿があるからこそ、ラストの主人公の台詞が恐ろしく鋭利なものになって、この映画の真髄を思い知らされる。
全く恐ろしい映画。
未島夏

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