未島夏

バビロンの未島夏のレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.2
途中までは『成長痛』の物語という印象で、サイレントからトーキーに移行した当時のハリウッドでの激動を、現代のあらゆる価値観をアップデートする過程にある葛藤への暗喩として重ね、時代を問わない普遍的な視点としてその苦心を描く姿勢に、かなりグッと来ていた。



しかし後半になり、時代の終焉を描くにつれて、今度は『変えられないもの』についての物語へシフトしていく。

ここが複雑で、まだ明嚼出来ていない部分もあるのだけど、とにかくこれからも移りゆく時代の中で、『映画の魔法』に対する激しい陶酔の中から、変えるべき事と変えるべきでない事を絶えず思考し続けて行こうという、作り手としての憧れと覚悟を表した映画であると、今の所は解釈している。



…とここまで書いて、やはりまだ自分の解釈が甘いなとあらためて思う。

凄い物をスクリーンから受け取ったのは間違いないし、今年の中でもきっと上位の鑑賞体験になるのだろうけど、まだ何かこの映画を観るための重要な視点が足りてない気がする。

そもそも、このボリュームの作品をたった一夜と少しで消化しようとしている事自体が愚かしく思えてきた。
未島夏

未島夏