アカデミー賞繋がりで鑑賞。
まず、主役2人。
上流階級でお金持ちで毎度礼拝に行くほど信心深く生真面目だが恐ろしく頑固なユダヤ人女性デイジーと、普段聡明かつ冷静で経験豊富な知識人の役が多いイメージのモーガンフリーマン、そんな彼が演じた比較的、明るく粘り強くて冗談好きな楽天家ホーク。(モーガンフリーマンのあっひゃっひゃっひゃって笑い声でもらい笑いしてしまう)
この2人組の配役と関係性からしてこの映画は価値あるものだと思いました。頑固と楽天家というコンビはベタだけど良かったし、ホークがデイジーの頑固な性格を変えていったり文盲のホークにデイジーがクリスマスプレゼントに勉強本をあげたり、互いの性格や価値観、立場は正反対でも補完しあっている関係性は微笑ましかったです。主役2人の役者も当然良くて、ありふれたセリフ一つ一つに深みと重みを感じました。
また、映画的要素もしっかり抑えていたのは良かったです。
特に車のキーでわかりやすく2人の心の距離がはかられたり、警官シーンで何も言わずとも不穏な空気が流れたり、気候や季節でなんとなく心情を表したり、ベタな演出だけどこの映画のトーンには合っていました。
途中のある出来事は緩やかに流れるこの映画の日々に突然さざなみがたったようで驚きましたが、そこまで若干停滞していたメイン2人の関係性を動かす要因としては充分でしたし、中盤のある種見所としてこの映画のタイプで陥りやすいダラダラさを消したように思えました。
そして、ラストの何気無い終わり方も普通なら辟易しますが、不思議と心地よさを感じました。人種差別へのメッセージもこの映画同様穏やかながらも力強く届きましたし、変に強調しないのもらしいなと思いました。
青々とした緑や人種の問題からして色の映画かなと最初は思いましたが、そんなのは関係なくデイジーとホークのほかでも無い2人の映画だと考え直しました。(結果的に人種にとらわれないメッセージともとれる)
麦の穂の黄色や生い茂る草木の緑、ハンスジマーの穏やかな音楽、のどかで閑散とした西洋式の家、その中に飾られるこぶりなシャンデリアや油絵、そして小鳥のさえずり。THE牧歌的な原風景が広がるあの空間だけでもこの映画は観る価値アリだと感じました。(リバーランズスルーイットやギルバートグレイプにも通底する形容できないやわらかさ)