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マーラーのefnのレビュー・感想・評価

マーラー(1974年製作の映画)
3.9
 作曲動機を追った映画の中ではかなり面白い。冒頭から交響曲第十番のヴィオラに合わせて別荘を燃やしてアルマの不倫を、マーラー5番で不倫(ベートーヴェンのパロディだからきちんと彼の像が視線を向けている)のはじまりを示唆するあたり「わかってる」。他にもアルマとの新婚時代や草原を行く牛のカウベルから4番、教会の鐘の音を3番の導入に仕立てるのも面白い。伝記に沿ったライトモチーフは一級。
 ただ、政治的な読み替えは過剰、凡庸。特にコジマ・ワーグナーがマーラーに対してニーベルングの指環を演じさせるためにノートゥングを差し出したり、戦っている最中にローマ式敬礼をしながらウロウロしているのはワーグナーの演出として、また(ワーグナー作品の抜粋なし、全曲上演を実現した人物として)マーラーの人生を演出するに相応しくない。(コジマとナチの連関よりも、戦後のミリタリーファッションに近いのが致命的)。アルマの不倫相手に親衛隊の格好をさせてマックス(ナチ)対マーラー(ユダヤ)の構図をつくりあげるまではうまい、のだが余計な記号が多過ぎる。性的であるのは構わないけど、それが史実からそれて「ナチを小馬鹿にするための道具」に落ちたら本末転倒だろう。
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