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ブギーナイツのRenのレビュー・感想・評価

ブギーナイツ(1997年製作の映画)
3.0
『リコリス・ピザ』公開前に、PTA作品を初鑑賞した。日本ではAV新法も成立しポルノ業界が取り沙汰されることが増えたことだし、良いタイミングで観られたと思う。が、作品自体は全力で高評価するかどうかかなり悩ましい。

栄枯盛衰ものとして観たときに、自分にはどうしても前半の上り坂部分が退屈に感じてしまったのが正直なところ。好きな方には申し訳無いけど、前半は睡魔との戦だった。
そこに息衝く人々の生活をそっくりそのまま映し出すように、長回しを使ったり、カットを割らずにカメラをパンさせることで視点を変えたりする演出も分かるのだけど分かるだけ。映像的快楽には繋がらず、惹かれる要因となり得るものではなかった。

とにかく万事がそんな調子で前半90分がかなり苦痛だったけど、後半65分はずーっと面白かった。銃もドラッグもなんでもありの無法地帯、やはり映画はよりゴシッピーなほど面白い。

ポルノ業界を描きながら、擬似家族ものであり創作賛歌でもある。ポルノ(性)というフィルターを通すことで、映画を創る上での 見る/見られる 関係が強調される。生身の自分を曝け出す覚悟とその弊害、そしてそんな業界に関わる人々への社会からの偏見や生きづらさが前景化する後半部が面白いのは当然と言えば当然かもしれない。悲劇になりすぎない幕の閉じ方も、擬似家族ものとしての温かみがあって良かった。

ラストカットで初めて彼の「取り柄」が観客に晒されるのも良い。これからもその自信を武器に彼は生きていく、物語は続いていくのだという確かな余韻。レンタルDVDで観たせいかモザイクがかかっていたのが残念だけど....。

多くの人が言っているように、スコセッシみもタランティーノみもありすぎるほどに感じた。『レイジング・ブル』っぽさもある、『グッドフェローズ』っぽさもある、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』っぽさもある、『パルプ・フィクション』っぽさもある。
あとタランティーノやエドガー・ライトに代表されるシネフィルの監督の作品は、ひたすらにサントラが最高なので好き。もちろん今作も。
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