Azuという名のブシェミ夫人

穴のAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

(1960年製作の映画)
4.6
『グランド・ブダペスト・ホテル』を観たとき、刑務所のシーンでこの作品を思い出してレビュー。
ウェス・アンダーソンはフランス映画好きみたいだし、良くオマージュを捧げていますので、あれもそうだったのでしょうね。
こちらの作品では容赦なくぶった切られる差し入れが、『グランド・ブダペスト・ホテル』ではケーキのあまりの可憐さ、美しさに躊躇して切れないなんてところにクスリとしてしまった。

さて本作品に話を戻して。
脱獄映画は数々あれど、私の中のベスト1はこの作品。
息を呑む緊張感、人間心理が約2時間の中にギューっと凝縮されている。
ひたすらに掘る、掘る、掘る、掻き出す、掘る、掘る・・・。
コンクリートを打ち砕く音が延々と頭に鳴り響く。
手に汗握るとは正にこの事で、終始臨場感がハンパない。
右から左へ、手前から奥へ、狭い道を黙々と進む構図も素晴らしい。

実話を基にしているのだけれど、なんとキャストの一人は実際の脱獄犯メンバーだというから驚き。
しかも普通に演技が上手い。
凄い経験してるからか、人間的厚みすら感じるもの。
そしてフィリップ・ルロワが格好良くてホレボレ♡
おじいさんになっても素敵だからねーこの方。

余分なものは一切無い、至極上質なヘルシー映画。
たったこれだけで、素晴らしいスペクタクルが生まれるんだ。