Azuという名のブシェミ夫人

レッド・ドラゴンのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

レッド・ドラゴン(2002年製作の映画)
3.9
ハンニバル・レクターシリーズを時系列に見直してみよう第二弾。
お次はこちらレッド・ドラゴン。
実際には『羊たちの沈黙』とかを見てるので、もうレクター博士が超絶にヤバイ人だってのは分かっているのですが、この作品でも物語序盤からガンガン攻めてくる彼。
彼が出てくるだけで、異様な緊張感が画面に張り詰める。
勝手に入ってくるのね、こっちの恐怖の領域に。
あぁ・・・最高に狂人。
あなたの笑みにゾクゾクしますよ。

『羊たちの沈黙』があまりにも完成されてしまってるが故に、この作品も蛇足と取られても仕方のないことかもしれないけれど、ハンニバル・レクターシリーズである事を抜きにしてもサスペンスとして、とても良く出来た作品だと思う。
この物語を特別なものにしている一番大きな要素はエドワード・ノートンの名演でしょう。
彼の魅力を最大限に活かした配役で、あたかも彼を想定して書かれたみたい。
ノートンが演じるグレアム捜査官は、レクター博士が見込んだだけのことはあって超能力とも言えるような推理が素晴らしい。
これは彼の驚くべき想像力の賜物なのでしょう。
その想像力はきっと被害者だけでなく、狂気に満ちた犯罪者の心理にまで寄り添っていく。
しかし、繊細に見えながらも決してその犯罪心理に飲み込まれることは無い、隠れた強さが彼という人間を形成している。
彼はレクター博士を恐れてはいたが、その恐怖心すら自己の中のひとつとして受け入れているように思える。
そういう言葉にはならないものをノートンが佇まいから醸し出していて、すごく素敵。

『ハンニバル・ライジング』よりも、この作品の冒頭の事件を描いた映画が見たかったなー・・・とか思ってしまった。

レイフ・ファインズ、フィリップ・シーモア・ホフマン、ハーヴェイ・カイテルもホントに上手な役者さん達ですし、そんな名優たちがみっちりイイ仕事をしてくれているお陰で、“最強に理解出来ない狂った犯罪心理”を“最高に受け容れ易く”描いた作品に仕上がっていると思います。