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映画 闇金ウシジマくんののらのレビュー・感想・評価

映画 闇金ウシジマくん(2012年製作の映画)
3.5
ヤミ金業者の丑嶋が借金をどうやって回収していくのか?というのが基本的な話の筋。金貸しが主人公の作品というとナニワ金融道を思い出すが、ありらが合法な金貸しだったのとは対象的に本作は完全に違法操業の闇金という違いがある。

一般的に借金回収物は踏み倒されかけた借金をどう回収するのか?という部分がメインに成りがちだが、本作では借金する側の人物像により焦点を合わせているのが特徴になっている。

あのため本作の実質的な主人公は林遣都演じる小川純というギャル男になる。このギャル男はイベント系サークルを取り仕切って成り上がる事で、異常なまでの承認欲求を満たそうとする人物で、その為なら他人を平気で利用する。実際イベント開催費を手に入れるために自分だけでなく仲間たちにまで借金させようとしたり、大島優子が演じる未來に売春を強要する。挙句の果てに借金を踏み倒そうと仲間たちと口裏を合わせて丑嶋を恐喝の容疑で刑事告発して嵌める。しかし所詮は素人の浅知恵で、プロの丑嶋達には通用せず、背負っているすべての借金を丑嶋に買い占められた挙句に、イベントの売り上げをすべて取られ更に高利の借金を背負わされるという展開になる。

この小川純というキャラクター不快感を感じるレベルのクズで非常に良い。しかしラストの陰惨な制裁シーンで、3人電話して保証人になる人間を見つけられたら許すという展開があるのだけど、最後に未來から電話があって、そこで人間らしさを見せてしまうシーンがある。この未來ってキャラクターはこの作品中唯一本当に純を尊敬しているキャラクターなので、その純にすら見捨てられるという展開だと因果応報だが、最後に新しい人生を生きることを決意した未來に借金を追わせられないと、急に良い人ぶるので因果応報感が弱くなってる。

基本的に本作は純と未來を対比させる構造になっているが、元々別々の話をひとつに纏めているので対比が弱くなってしまっている。とはいえ未來に関しては大島優子がいい味を出している。話の始まりの頃は目の焦点がどこか彷徨っているが、出会い喫茶を辞めてファミレスで働くようになった時の眼の焦点の合わせ方は上手さを感じる。

そしてなによりも丑嶋を演じる山田孝之の存在感ないしは怪物感は、このシリーズを実写化するにあたり山田孝之を起用した時点勝利と言っても過言ではないだろう。

もちろん肉蝮の件が純が追い詰められていく要素としては機能しているが、あの強烈なキャラクターにしてはイマイチ見せ場が少なくて勿体なかったり、最後ちょっといい話に風にして、今までの不愉快さをお茶で濁そうとする辺りは、疑問に感じる部分もあるが、灰汁の強いキャラクターたちを演じる役者陣(脇役も含めて)のアンサンブルは非常に良い。

ただちょっと三池崇史作品に出てきそうな人ばかり感はあるのと。ラストで借金を返そうと、丑嶋の元に走る大島優子の胸の揺れは見どころ。
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