河

赤ちゃん教育の河のレビュー・感想・評価

赤ちゃん教育(1938年製作の映画)
3.5
初ハワード・ホークスだったけど選択ミスったかもしれない。そして翻訳が割と酷いバージョンを見てしまった。

未完成の恐竜の化石を完成させ、結婚することに人生のゴールが決まっている主人公が、映画の作り手と、その補佐であり共犯であるヒロインが引き起こしていく作為的な偶然、それに伴う誤解によって段々映画的な状況へと引きずり込まれていく。ヒロインと作り手の中間にある存在として豹と番犬がある。「新婚旅行よりも研究が優先されるべき」という主人公の婚約相手の台詞にあるように、主人公は今の研究中心の生活から抜け出すことができない。ヒロインと主人公の出会いは作り手による作為的な偶然によるものであり、ヒロインは同じく偶然出会う精神科医の台詞によって主人公に恋していることに気づき、作り手の共犯となる。

結果として、未完成の恐竜の骨格、婚約者など、主人公が冒頭に保持しており、同時に主人公を決定づけていたものは作り手やヒロインによって全て崩壊する。主人公はフィクショナルな状況を乗り越えた後に、ヒロインに恋をしていること、そして自分がその状況を楽しんでいたことに気づく。

映像というよりシチュエーションやセリフでドライブされていく映画だが、例えばひたすら喋り続ける主人公に対して「ショット/撮影(ゴルフのshot/shooting)の間に喋るな!」という台詞が吐かれ、ヒロインに対して主人公が「(彼女の言ってることは)全て映画の引用だ!」と指摘するなど、主人公がメタ的なレベルにあり、作り手の意図を超えた台詞を発しているように感じられる言及がある。そして、後半になると映画を引っ張っていくのは作り手ではなく、主人公とヒロインとなっていく。それはラストの崩壊/解放が作り手とヒロインだけでなく、主人公にも由来する結果であるように見せる。

作り手が主人公を決定するものだとすれば、決定論と自由意志の狭間を捉えた映画のように感じる。クライマックスまではずっと撮らされている感が出ている映画で、そこがこの主題に反響しているような感じもする。
河