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コンドルの河のレビュー・感想・評価

コンドル(1939年製作の映画)
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おそらくジャン・グレミヨンはこの映画を下敷きにして『曳き舟』を撮ったんだろうと思う。「Only Angels Have Wings」とタイトルにあるように、翼を持たない人間達が会社の存続をかけて命懸けで飛ぼうとする。航空郵便会社の話ではあるが、鳥めがけてニトロを飛行機から投下する、コンドルが直撃することによって飛行機が撃墜しかけるなど、戦争を比喩しているように見えるシーンもある。会社の存続を決めるのはオランダ人であるが『曳き舟』でもオランダ人が重要な取引相手としておかれている。飛ぶことはいつか死ぬということであり、阻止しようとするヒロインに対して主人公は飛ぶことを選ぶ。騙してでも飛ぼうとする純粋な「キッド」の残した両面が表のコインは、何があっても飛ぼうとすることを象徴するようなモチーフとなっている。そのコインを引き継ぐと同時に、それによってヒロインに残って欲しいという意思を伝えるというラストの行為によって、飛ぶか残るかという葛藤が解決されたかのように錯覚される。「浮上すること」についての映画であり、墜落しつつある飛行機(航空会社)においても仲間である同乗者を見捨てず運転し続ける、それによって再び浮上することができるという精神性が中心に置かれている。この精神性はそのまま『トップガン』シリーズに引き継がれ、最新作で墜落しつつある飛行機=映画というモチーフに至ったんだろうと感じる。
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