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羊たちの沈黙のsoffieのレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
4.8
1988年に発表された原作は
トマス・ハリス著作のサイコスリラー小説


ジョナサン・デミ監督によって
1990年映画化された

この映画は著者トマス・ハリスの生み出したハンニバル・レクター博士シリーズの第2作目になる

「レッド・ドラゴン」
「羊たちの沈黙」
「ハンニバル」
「ハンニバル・ライジング」

この4作品で最も有名なのが「羊たちの沈黙」だろう。

精神科医にしてカニバリズムであり、サイコパス、鋭い洞察力を持ちどんな立場の人間も思いのままに操ることが出来る、桁外れの天才的かつ残酷な犯罪者を描いたこのシリーズは全て映画化されている。

著者トマス・ハリス自身が文壇の中でも謎に包まれた人物と言われている

「羊たちの沈黙」に出てくるテネシー州で生まれ、新聞記者となった後に、最初に書いた小説が大ヒットしてから5作品を書き、現在81歳。
トマス・ハリスは6作品の小説しか書いていない。

そしてその6作品全てがハリウッドで映画化され、そのうちの4作品がレクター博士シリーズとなる。

「羊たちの沈黙」はアカデミー賞主要5部門と呼ばれる(「作品賞」「監督賞」「脚本賞」「主演男優賞」「主演女優賞」)全てを受賞した映画としても記録が残っている。

この映画で天才サイコパスを演じたアンソニー・ホプキンスは以後「レクター博士の俳優」と記憶される事が多く、その呼び名に難色を示している。

FBIの訓練生として事件に関わるクラリス役のジョディ・フォスターはこの後映画化されたレクター博士シリーズではクラリスを演じていないがレクター博士シリーズの「クラリス」といえばジョディ・フォスターの人気が1番高い。

また映画化されたレクター博士シリーズで
アンソニー・ホプキンスが演じたのは
「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」「ハンニバル」3作品で
成人したハンニバル・レクターは全てアンソニー・ホプキンスが演じている

レクター博士の人気に乗じて制作されたTVドラマではマッツ・ミケルセンが美しく優雅なレクター博士を演じて話題を呼んだ。

最近ではアメリカCBSでFBI訓練生のクラリスを主人公にした「クラリス」がドラマとして放送されている。

映画の中で残虐な方法で若い女性を殺した連続殺人犯バッファロー・ビルが住んでいた家は、実際はペンシルバニア州のペリーオポリスにある。

2020年に売りに出されてネットニュースにもなったが、直ぐに熱狂的なホラー映画マニアに買い取られて、ヴィクトリア朝の美しい改装が成され、地下室も明るく快適な建物に生まれ変わったが、間取りや壁紙は映画に出てきた物と同じ物が使われている為に知る人ぞ知る「あの事件があった家」感が残されている。

地下室に古井戸がある家って怖い。

オーナーは宿泊施設や結婚式を挙げられる施設として開業している
「バッファロー・ビルの家」でググればオーナーが作った動画が閲覧出来るのも楽しい。

あのバッファロー・ビルの家で結婚式を挙げて、新婚初夜を迎えたい新郎新婦にとってはまたとない聖地だろう。

今から30年も前の映画なのに何度見てもこの映画はひんやりとした湖の岸辺にある湿った鬱々とした不気味さが伝わってくる。

サイコスリラー映画なのでショッキングな事件や場面が多数あるが、この30年の間にTVドラマや映画で凄惨なシーンは嫌と言うほど見て慣れているはずなのに、既に分かっているにもかかわらずショッキングな場面は衝撃を受ける。

不気味さの鮮度は落ちていない。

あらゆるサイコパスが様々な映画に出てくるが、サイコパスと言えば「ハンニバル・レクター博士」と映画を見ていない人まで知っているのは、やはりそれだけ著者が完璧に作り上げたキャラクターであり、最初に映画化されたこの「羊たちの沈黙」でアンソニー・ホプキンスが完璧な演技を見せたからだろう。

印象的なシーンは、クラシック音楽が流れる静かで優雅な調べに乗せて、刑務所から出されて厳重監視の檻に入れられているレクター博士が逃げ出すシーン

あの場面に流れているゴルトベルク変奏曲はネットで検索すると「羊たちの沈黙クラシック」で出てくる程人々の印象に残っている。

このレクター博士が犯罪者でありながらも「博士」と敬称を付けて呼ばれるのは彼の立ち居振る舞いと口調が大変上品で優雅だからだろう

著者のトマス・ハリスは博士を最高に魅力的な紳士に描いている、そして作品の中で読者が興味を持つ「優雅な音楽」や「高級品」にレクター博士のイメージを焼き付けている

例えば「羊たちの沈黙」の中では初対面のクラリスに向かって「高級バックに安物の靴」と言いながらも
「レールデュタン、でも今日はつけていない」とニナ・リッチの高級な香水を上げている

そしてゴルトベルク変奏曲

他のシリーズでは、博士がクラリスに贈った、サンタマリアノヴェラのアーモンドの石鹸が世界的に有名になった。

日本のサンタマリアノヴェラにも売っているが、博士がわざわざクラリスのために買いに行ったフィレンツェの本店で買いたくなる逸品

世界最古の薬局と言われるドメニコ修道院の修道僧が育てた薬草から作られる香水や石鹸が売られている、美しい店内は多くのレクター博士ファンにとって聖地になっている。

レクター博士と言えばアンソニー・ホプキンスだが「ハンニバル・ライジング」で若き日のハンニバルを演じたのは美男のギャスパー・ウリエルだった
やはり知能指数が高く優雅で上品なサイコパスは「美しい」というイメージがあるからだろう。

TVドラマシリーズでマッツ・ミケルセンが演じた、美しく優雅で残虐なレクター博士も、主演をはるサイコパスは「美しい」というイメージがファン心理をくすぐるからなのだろう。

アンソニー・ホプキンスはけっして長身の二枚目美男俳優ではないが、彼は「日の名残り」で英国貴族の誇りである城の「執事」を完璧に演じている。

その城の歴史と風格と、城主の威厳を形付ける存在である「執事」は優雅で上品で気遣いが出来て、知性と教養を身につけている城主の影の存在であり、仕える城主より遥かに城主を理解しているというイメージがある。

大ヒットドラマの「ダウントンアビー」にも、半世紀近く先代の伯爵の時代から仕えている執事のカーソンさんが出てくるのでご存知の方も多いだろう。

ハンニバル・レクターは貴族の血統という設定があるが、アンソニー・ホプキンスが演じるレクター博士には確かに一般庶民ではない卓越した上品さがあるが故に、残虐なシーンのギャップがより鮮烈に映る。

FBI訓練生として将来に希望を持ち、一流の捜査官を目指すクラリスは光輝く存在で、男だらけの現場や仕事場の中で、唯一といっていいヒロインだ、ハンニバル・レクターが特別に扱う事から彼女の存在は見る側にも特別な女性となる。

「羊たちの沈黙」の中でクラリスは母親は早くに亡くなり、まだ幼い頃に父1人子1人の幼少時代にも関わらず父親も早くに亡くした設定になっている

クラリスを演じたジョディ・フォスターは他の作品「コンタクト」でも母親を早くに亡くし、父親だけが唯一の肉親なのにやはり幼い時に父も亡くした設定の役を演じている。

ジョディ・フォスターには何処か両親の愛情を失った哀しさがあるのだろうか?違う映画で同じ設定の役をやるのはヒット作を持つ俳優の運命だがジョディにも同じ事が言える。

「羊たちの沈黙」はあまりに有名な作品で、既に見た人の方が多いだろう、もしかしたら昔見たけどどんな映画だったか詳細は忘れてしまったという人もいるかもしれない。

今一度見てみると、昔見た時の印象そのまま相変わらずの不気味さと衝撃が体験出来る作品。

私は1ヶ月無料体験のU NEXTでこの映画を久しぶりに見てレビューを書いている。

アンソニー・ホプキンスが若くてビックリした。

そしてクラリス役のジョディ・フォスターは光輝いていた。

またいつか、もう一度怖いもの見たさで観るかもしれない、そしてまた変わらぬ不気味さに引き込まれて最後まで見て
「あ〜やっぱり怖かった」
と1粒で何度でも美味しい名作映画の恩恵に預かる事だろう。
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