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オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴのsoffieのレビュー・感想・評価

5.0
2013年公開

監督ジム・ジャームッシュ

クリプト・ヴァンパイア・ラブストーリー

ジム・ジャームッシュ監督は2011年に、ティルダ・スウィントン、
マイケル・ファスベンダー、
ミア・ワコウシュカの出演許可を取ったが、制作費の都合がつかず
その後ドイツの会社が融資することで制作の目処が立ち、マイケル・ファスベンダーが役を降りてトム・ヒドルトンがアダム役になった。

私はこの映画をFilmarksで見るまで知らなかった。

UNEXT 1ヶ月無料期間に観たい映画リストに載せていた。

感想から言うと

今まで見なかった事が信じられないほど
メチャメチャカッコイイ映画だった

音楽、配役、ストーリー、台詞
そして映画の中の場面全てが
VOGUの企画ページかと思うほど
世界観が出来上がっていて美しい

さらに私にとってティルダ・スウィントンは「オルランド」で「コンスタンティン」の大天使様だが、この映画の中のイブ役はもう…

やはりティルダ様は永遠の命を生きるヴァンパイアだったんだ!そうよね!やっぱりね!そうじゃないかと思ってた!

…と納得するほど格好良くて美しかった。


元々「ヴァンパイア」大好き人間の私
少女漫画・萩尾望都の「ポーの一族」を読んでどうにか吸血鬼になれないか毎夜お迎えが来ることを夢見た学生時代から

「インタビューヴァンパイア」を観て、レスタト様に血を吸われたい!もしくはクローディアになってレスタトとルイに育てられたかった!

…等と謎の妄想に拭けること数十年(年季が入ってます)
現代のこの不穏な世の中では吸血鬼も生きていても面白くないだろう、
そもそもこんなに食生活が乱れて添加物だらけの食品から作られた肉体の血液を飲むなんて「危険だ」どんなウィルスに汚染されてるかも分からないのに
人の血を飲むなんて野蛮だ!吸血鬼もビタミン剤飲んでどうにかなる時代なんじゃないか?とたまに真剣に考えていた。

この「オンリーラバーズレフトアライブ」は、そんな私の現代の吸血鬼問題をもまじめに捉えて、クールでロックでエレガントで、何よりファッショナブルな映像に仕上がっていて感激した。

丁度、数日前に「DUNE」を観たばかりだったがなんだか音楽と世界観が似ていたように思った

どっちもカッコイイ!!


タンジールに住むイブと米国デトロイトに住むアダム

映画はそれぞれの住まいの部屋の中にいる主人公達の姿が映し出される所から始まる

ギターやアンプ、レコードが乱雑に置かれた部屋にロックスターさながら長椅子に腰掛けて顔にかかった黒髪に虚ろな表情のアダム

何冊もの本が乱雑に積み上げられた部屋で異国の美しいガウンを身に纏い床に寝そべり白髪に近い金色の髪に包まれて天井を見上げるイブ

錆びたエレキギターのマイナーな音が流れるそのシーンだけで目が離せなくなる。

離れて住む2人の関係
どれくらい2人は長く生きているのか
そして現代の吸血鬼生存問題

唯一の糧である新鮮で安全な血液をどうやって手に入れているのか

映画の中ではちゃんと描かれている
唯一謎なのはアダムが常に大金を持っているが、あの大金はどこから手に入れているのだろうか?

台詞の中に歴代の天才や有名人が出てきてどのように関わったかチラッと語られるのも楽しい。

イブが久しぶりにアダムに会いに行って
2人で過ごす数日は美しい

ティルダ・スウィントンは「オルランド」の中でも眠っている姿が映し出されていたが、イブとアダムの眠る姿も絵画の様に美しかった。

「不思議の国のアリス」でアリスを演じたミア・ワコウシュカがイブの妹を演じている。

「O型 RHマイナス」のアイスキャンデーを美味しそうに食べるシーンはシュールで可愛かった。

そしてイブに新鮮で安全な血液を提供していた、長い年月を生きた老人が最後にいったい誰だったのかが明かされるのも面白かった。

イブが飢えて来るとだんだんミイラのように乾いて来て、血を飲むと銀髪に金色の輝きが戻ってみずみずしくなる所もリアルだった

そして人外を演じる人と私が思っている
トム・ヒドルトンは「ロキ」様だが
この映画の中ではロックスター風なので何かと脱いでいるシーンが多くてメッチャメチャ身体が美しい。
男性の筋肉を見ても「ふーん」としか普段思わないが、この映画のアダムの裸体は監督の好みなのだろうか、本当に美しく撮られて近寄り難い高貴ささえ感じる。

デトロイトの荒廃した風景と、タンジールの異国情緒溢れる雰囲気、その中でひっそりと静かに息を潜めているヴァンパイアの姿が描き出されている

アダムは人間のことを「ゾンビども」と蔑称で呼び忌み嫌っている

「あいつらは手遅れになるまで過ちに気付かない」と人間の歴史を嘆いている

題名の「Only lovers left alive」の意味が最初私には分からなかったが

「恋人たちだけが生き残る」あるいは
「生き残った恋人たち」
「愛し合うものだけが生きている」
と読み取れるのではないだろうか。

映画の最後にイブが好んでアダムに話してもらうアインシュタインの「量子力学」の話がある。

科学的な話だが映画の中で2度出てくる

「量子力学的に絡み合った2つの粒子を
離した場合、たとえ宇宙の反対側にあろうと
一方に影響を与えればもう一方にも影響が出る」

「不思議な遠隔作用だろう」

「理論ではなく証明されている
宇宙の反対側にあっても…」

イブはアダムのこの話にうっとりと聞き入っている

映画を見終わってから
これが普段離れて暮らしている2人の事に置き換えてイブが聞き入っている事に気付いた。

離れていても2人はひとつ

恋人たちは生きている
愛し合う2人はお互いのために生きなければいけない

2人は愛し合うために生き残る

ラストシーンまで観てその意味が深く心に残った。

監督が「クリプト ヴァンパイア ラブストーリー」と言った
「クリプト」とは「暗号」
離れていても通じている愛し合う2人にしか分からないラブストーリーという意味だろう

ロマンティックな響きがある
その意味が理解出来たラストシーンだった


吸血鬼なんて現代にそぐわない生き物だと昨今考えていたが、この映画のアダムとイブを観て、やっぱり格好良いッ!!!
と再認識した映画。

よく考えると恋人同士のヴァンパイアものってこの映画以外に無いような気がする
(トワイライトは最初人間とヴァンパイアの物語だったし、他もだいたい片方が人間からヴァンパイアなるストーリーが多い)

長い年月吸血鬼として生きていると、様々な能力が鋭くなると聞いている

イブは手で触れたものがどれくらい古いものかピタリと当てる事が出来る
もしかしたらアダムより100年程歳上なのかもしれない

外に出る時は手袋とサングラスを欠かさない、多分、触れた物の生気を吸い取る事が出来るので下手に色んな物に触れたく無いのだろう、そして目も光が苦手なのはもちろん、吸血鬼は視線で相手を惑わす事も出来るので人と目を合わせたく無いのだろう。

ヴァンパイア世界観にどっぷりハマれる映画だった、DVD買って枕元に置いて毎夜眠りたい。

音楽も格好良かったのでダウンロードしてサントラを買ってしまった。

久しぶりにドカンと影響を受けた映画。
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