のら

おとなのけんかののらのレビュー・感想・評価

おとなのけんか(2011年製作の映画)
4.0
ポランスキーによる舞台『大人は、かく戦えり』の映画化で、日本ではマギー演出、主演大竹しのぶで舞台上演されていた作品。

舞台の映画化なので、ひとつの部屋の中で巻き起こる騒動を、人妻喧嘩芸が得意のケイト・ウィンスレットに、胡散臭さ抜群のクリストフ・ヴァルツ。いつも神経をすり減らしているジョディー・フォスター。そして脇役が身体に染み付いているジョン・C・ライリーという4人だけで見せきる。

話としてはケイト・ウィンスレットの子どもが、ジョディー・フォスターの子どもに怪我をさせてしまい、その示談というか和解のためにケイト・ウィンスレット夫妻がジョディー・フォスター夫妻の家に訪れる。という普通だったら10分もすれば終わるはずの話が、ジョディー・フォスターがそれを許してくれない。ケイト・ウィンスレット夫妻が帰ろうとするたびに新しい火種が投下され、始まりは親同士の喧嘩が最終的には男対女の喧嘩に発展していくという。

この映画が上手いのはテンポよく話を進めていくところで、日本で舞台を映画化する場合に、回想とか入れて時間の流れを切ったり、だらだらと説明ゼリフを言い続けるのが主流なんだけど、この映画そういうった事が無いのでリアリティのある大人の喧嘩になっていて、登場人物が自分自身の戯画としてそこに存在しているように見える事に成功してる。

役者陣もケイト・ウィンスレットは夫に返り見られない妻役が似合うというか、もう名人芸の域に来ているし。クリストフ・ヴァルツの慇懃無礼な感じも良い。そしてジョディー・フォスターの常識ぶってる奴程一番頭がおかしいという典型の演技も良いし。ジョン・C・ライリーの人畜無害そうな奴ほどキレるとヤバイというのも良く出ていて、文句なしの演技といえる。

そして邦題の「おとなのけんか」(ひらがなと言うのがみそ)と言うのは作品のテーマと完璧に合っていて邦題として完璧といえる。
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