ミッキン

キッドのミッキンのレビュー・感想・評価

キッド(1921年製作の映画)
4.2
今から30年程前、大学の同級生・宮岡の下宿に入り浸った。
泣ける映画について語り合っていた時、あいつは『キッド』と即答した。
当時はチャップリンをまともに観たことがなく、所詮はカビの生えた無声映画くらいにしか思っていなかった。だから中身は真剣に聞いてないし覚えてもない。

時は流れ、令和。
オンデマンドで『独裁者』や『ライムライト』、『街の灯』を観てチャップリンの偉大さをようやく知ることが出来た。でも『キッド』は配信ラインナップにない。気が向いたらDVDでも借りよう、そう思って数年。今日偶然にもU-NEXTで見つけることができた。

前置きが長くなったが、結論から言うと期待したほどには及ばなかった。勝手にハードル上げまくったので『なんか思ってたんと違う』のである。
まぁ、泣きたい前提で観たのがいけなかったのかもしれない。
お決まりのドタバタ喜劇の中で時折描かれる息子への深い愛情。
必死で息子を守るチャップリンの父親像は格好いいし、ジャッキー クーガン演じるジョンも実に愛らしい。
けれど足りないものがあるとするならば映画としての余韻。要らないものを挙げるとすれば夢の国のシーン。
惜しい、実に惜しい。
まだ長編の型も定まってない100年前の映画だからこれでも凄いんだろうけどチャーリーとジョンの幸せな様子をラストシーンで描いて欲しかった。

宮岡は今でもこの映画が好きなんだろうか。久しぶりに酒を酌み交わして映画談義をしてみたい。