だい

審判のだいのレビュー・感想・評価

審判(1963年製作の映画)
3.1
原作とはディテールがけっこう違って、
未完に終わった原作をオーソン・ウェルズ流に再構成したという感じの作品。

まあ、
大作家の未完に終わった作品。
しかも冒頭と結末は書かれていて、
その間が断片しか書かれていない。

となると、
やっぱりクリエイター的には自分の解釈で完成させたくなるだろうな、
というのはわかる。


原作と比較すると、
登場人物全員が不条理の権化でしかなくて、
ウェルズ的にはヨーゼフ・Kも含めて、
行動原理に不整合性を持たせたかったのは理解できる。
原作は一人一人はここまでエキセントリックじゃない笑

ウェルズは意図的に大型コンピュータを登場させたりといった仕掛けでも見られる通り、
「既に結果が約束されている」
ことにテーマの比重を強めに置いていて、
逆に言うと、
その中での人の行動の無意味さに寓話性を見出だしてるのだと思っていて、
いわば人間の機械化、
それに近い感覚でテキストの解釈を行っている印象がある。

一方で原作は、
「法」というものの指し示す範囲や意味などについての個々別の差違を強く意識しているものだとぼくは解釈しているので、
それぞれの意志や意識の有無という点において、ウェルズの表現との違いは大きく感じるところがある。


ただそもそも、
それを違うものと感じるか、類似のものと感じるか自体が解釈の問題なので、
興味のある方は原作と見比べてもらいたい。

教条的で絶望的な原作と、
幻想的で虚無的な映画版。

未完の作品だからこそ無限の解釈が許されるのだ。
だい

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