80年代の香港を今日観ると、そこにはパラレルワールドを覗き見るような新鮮さがある。
何せ香港人の警察官が、ボスの威光を嵩に着るマフィアに向かって、うちのボスは女王だぞ！と言い返すのだから。
総督が白人で、中国語を喋っても、その特殊な香港の状況はかえって民主主義という一点において普遍性がある…なにせジャッキー・チェン演じる一警官が、総督に向かって、保身のために市民を裏切るな！と説得する事が作中で許され、また映画として描く事が許されるのだから…。翻って、「今の香港」では共産党を批判する書店主が失踪する。我々の世界は基本的に進歩、漸進する世界だが、特定の地域においては必ずしもそうではないのだ。
…という堅苦しい話はさておいて、全編ほぼアクションシーンという充実感、カリオストロの城が参考にしたんじゃないかと思うような時計台のシーン、香港（中国）人にしかできないであろう徹底した修練の賜物である驚異的アクション。そしてそのアクションの驚異的技をすんなり、ラストシーンの解決手段として放棄する思い切りの良さ。80年代の金字塔と呼ぶに相応しい。
