田島史也

ホーム・アローンの田島史也のレビュー・感想・評価

ホーム・アローン(1990年製作の映画)
4.1
天才ケビンの大戦争

ダドリー家を彷彿とさせる嫌な家族と、不憫な少年ケビン。家にひとりぼっちになってしまった彼が、空き巣との世紀の攻防を繰り広げる。

一切の過不足ないストーリーと描写。ストーリー展開が分かりやすく、憎たらしい気持ちや、ハラハラ・ドキドキ・ワクワク、爽快感、といったひと通りの感情を網羅するだけの内容の濃さを伴う。アトラクション的に楽しめる映画であるという点で、大衆に愛される名作たり得たのだろう。

最後家族が家に帰ってきて、1人で買い物をしたことに驚かれ、それ以上の出来事であるはずの対空き巣作戦については一切語られない。真実はケビンと老人と観客のみ知る。この家族がケビンに対して一貫して持つイメージと、観客の視線の先に映るケビンのイメージがことごとく乖離し、その誤解は最後まで解かれることは無い。子供の可能性や真価に大人が気が付かないというのはよく描かれるものだが、その真価の1部を少しだけ開示し、あとは沈黙するという構成はなかなかないように思う。したがって、本作においてケビンは最後まで不憫な存在なのである。もちろん、最後に事の全てが語られ、家族に仰天されるというのもスカッとして悪くはない。しかしここであえて口を閉ざしたことで、本作がケビンと観客の中にのみ共有される、「秘密の出来事」として世界から遊離されるのである。こうして人々の心を掴んで離さぬ名作となったのだから、実に巧妙な策であったと感心するばかりである。

エンタテイメントの全てがここにある。そんな気がしてくるほどに濃密な作品。


映像0.8,音声0.9,ストーリー0.9,俳優0.9,その他0.6
田島史也

田島史也