ひろ

白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々のひろのレビュー・感想・評価

3.6
白いバラ抵抗運動のメンバーの一人であるゾフィー・ショルの最期の日々を描いた2005年のドイツ映画

ベルリン国際映画祭で監督賞と女優賞(ユリア・イェンチ)を受賞した

この女性を知っている人はあまりいないだろう。90年代にゲシュタポの尋問記録が見つかるまで、その存在すら知られていなかった勇気ある女性ゾフィー・ショル。非暴力主義を貫き、己の信念を守り通して処刑された。この女性の気高さを目にして、心を打たれないなんてことはない。

ドイツの戦争映画というと、ユダヤ人迫害やヒトラーやナチスにばかりスポットが当てられるが、日本帝国にも善良な市民がいたように、ドイツにだって善良で勇気のある市民がいたのだ。21歳の若き女性が、ナチスに真正面から向き合う姿に涙するだろう。そして、信念を貫くことの美しさを知るだろう。

ゾフィーを演じたユリア・イェンチの演技が素晴らしい。ドイツ女性らしい顔つきで、最後までその目に光を灯していた。尋問官を演じたアレクサンダー・ヘルトもよかった。ゾフィーという女性の気高さに心を動かされながらも、職務を全うするという複雑な表情が見て取れた。

アメリカの戦争映画やドイツを題材にした戦争映画なんてたくさんあるけど、敗戦国による反戦映画っていうのは、先勝国が作る反戦映画とは違う趣がある。反省、後悔、憎しみ、悲しみ、いろんな感情があるだろう。それでもこの映画を観ると、負の感情より清らかなものを感じ取ることができる。ゾフィーという女性の最期を、見届けることをお薦めします。
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