あーさん

いまを生きるのあーさんのレビュー・感想・評価

いまを生きる(1989年製作の映画)
4.4
かなり昔に観たものの再鑑賞。

将来エリートになるべく期待をされて全寮制の名門進学校ウェルトン・アカデミーに入学するということは、誇らしいことでもあるがきっと思った以上に大変なことだろうと想像する。入学式の回想シーンでまだあどけなさの残る子が行きたくない…と泣いて母親に抱きつくシーンにはこんなに小さいうちから親元を離れて…と驚きを隠せない(多分日本の小学生くらい?)。

伝統、名誉、規律、美徳、四つの柱の元に送る厳しく堅苦しい学校生活。
そこへ新しい英語教師がやって来る。名前はジョン・キーティング(ロビン・ウィリアムズ)。同校の卒業生である。

キーティングの授業は一風変わっていた。教科書の一部を丸々破りとらせ、教室を飛び出し、ボールを蹴りながら、体を動かしながら、詩を暗唱させる。自作の詩を読ませる。大きな声で自己表現することを叩き込んでいく。なんて面白そうな授業!私も受けてみたい…。

昔キーティングが在校生だった時やっていた「死せる詩人の会」を年鑑から見つける生徒達。今からするとかなり昔風?だが、真似をして夜な夜な抜け出し洞窟に集い、詩を読み合う。楽器を演奏する。リズムに合わせて言葉を発しながら踊る(今で言うラップのよう!)。表現することの楽しさに目覚めた彼らは俄然生き生きとし始める。その中でノックス(ジョシュ・チャールズ)はふとした縁で彼氏のいるクリス(アレキサンドラ・パワーズ)に恋をする。何としても振り向かせたいと奮闘する彼を仲間は皆で応援する。。
一方厳格な父を持つニール(ロバート・ショーン・レナード)はお芝居に夢中になり、オーディションに応募してシェイクスピアの”真夏の夜の夢”のパックの役を射止めるのだが。。

17歳の男の子達の青春時代とは何たるか!というのをこれでもかと見せられ、本当に男の子は真っ直ぐで純粋だなぁとつくづく思う。その素直さは眩しいほどだ。
男子校の友人関係もやはり特別なんだろうなぁ…と思いながら観た。
それにしてもすごい勉強量。。しかしエリートくん達も陰でタバコを吸ったり、女の子に興味津々だったり(でもとっても紳士!)、、色々悩むんだなぁ〜
でも、反抗期バリバリの時期なのに彼らは普通の子達と違う所があった。それは親や先生に逆らえない子が多いということ。授業をサボったりバイクを乗り回したり殴り合いの派手な喧嘩したりチキン・レースをしたり…そんなことは軽々しくできない。退学をちらつかされ口答えさえ許されない。ちょっとはみ出すことはあっても決して羽目を外し過ぎないのが彼ら流。何故なら…彼らは自分達に期待されていることを悲しいかな、ちゃんとわかっているから。。
でも、その分ストレスはものすごいと思う。思春期に少年、少女から大人に変わって行く時に絶対に避けて通れないこと、それは大人に反抗すること。これができないと大人になった時、自分というものが確立できなくて大いに困る。だから、反抗することは必然である。しかし、自分が子どもの時は”どうして大人はわかってくれないんだ!”と思っていた自分が大人になると”何故子ども達は言うことを聞かないんだ!”となる訳で…。
時にキーティングのような先生がいて、のびのびとさせてくれるのだ。が!しかし、親はなかなかそこまでできないものだというのも真理。先生は子ども達が卒業したら責任はないけれど、親は生まれた時からずーっと、そして子どもが大人になってもずーっと親だから。。心配なのだ。思い入れも違う。だから私はニールの父親の気持ちもわからないではない。ただ、趣味として演劇をすることも許されないというのは…息が詰まる。
ニールの悩む姿を見ていると胸が張り裂けそうになる。頑張れ!
乗り越えるんだ!親が理解してくれるのなんて待つな!やったもん勝ちじゃないか!

しかし、現実は非情だった。お父さん、それはないよ。手の届かないところに、それも全く興味のない所に強制的に…それはナシだよ。。子どもは親の操り人形じゃないんだから…。
感情もあれば意思もある。
認めてあげようよ!
そうしないと、、

大人になる前に子どもはサナギになる。ぐちゃぐちゃで汚くて形も定かでないのを見て大人はそれを否定する。違うんだ、これがないと大人にはなれないんだ。自由にさせてよ、たくさん失敗させてよ!失敗しないとチャレンジできなくなってしまう。小さく固めないでよ!人を傷つけること以外なら若気の至りって大人になった時、言わせてよ。。

若き日のウブウブなイーサン・ホークに出会えたのは嬉しかった。ヒヨっこみたいな彼が成長してビフォアシリーズのイーサンになるのか!と思うと大げさかもしれないが感慨深い。勿論、これは役柄上の変化であって彼の全く本来の姿ではないのだが。。
イーサン演じる内向的なトッドがキーティングの授業で自分をさらけ出し、初めて大きな声で素晴らしい詩を読むシーンは本当に心を揺さぶられる。大好きだ!

今作からは思春期の男の子の成長を見守る親として、大人としてやってはいけないこと、やるべきこと、とても大切なメッセージをもらえた。

ラストのシーンでは、涙腺崩壊。
キーティング先生、子ども達はあなたのメッセージをちゃんと受け取って、仕事もできてユーモアもあって勇気もある、実に素敵な大人になってくれるはず!

ありがとう、キーティング。
ありがとう、ロビン・ウィリアムズ。

若者よ、カーペ・ディエム!!!
(今を生きろ)
あーさん

あーさん