あーさん

マッチ工場の少女のあーさんのネタバレレビュー・内容・結末

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

何だろう、、いつもの大好きなカウリスマキの作品とは質感が違う。

登場人物の感情を排した演技は、通常運転。

でも、いつものほっこり感や一筋の希望の光が今作には全く見当たらなかった。
どこか突き放したような、すてばちみたいな。

どこまでも報われない。
でも、どこか突き抜けている。

少女というには歳が行きすぎているイリス(おそらく20代?)は母親と継父?(彼氏?)との会話はほとんどなく、家事全般を担わされ、ささやかな工場のお給料も全て巻き上げられる生活。(母親は常にタバコを吸っているだけ💦いわゆる毒親)

冒頭のマッチ工場の様子をひたすら映すカメラワークがエグい。
"罪と罰"の冒頭、食肉加工工場のシーンも長かったけれど、こちらも負けていない。
言葉ではなく、音楽と無機質な工場が単調でエンドレスなイリスの日常を物語る。

人並みに夜の街に繰り出し気晴らしをするも、地味で内気なイリスは誰からも誘われない。
そんなある日、お給料をそっくりそのまま渡す事に文句一つ言わなかったイリスが欲しかった憧れのドレスを買って隠していたのだが、母親に渡したお給料が少ないことでバレてしまう(明細書込みで渡したらあかん…)。
そのことを家に居着いている男に罵倒され、頬を叩かれて傷心のイリスはそのドレスを着て出かける。
そして、街で出会った金払いの良い年上の男との一夜が、イリスの心に小さな火を灯す。。

運命の人かもしれない!!

が、そんなささやかな夢も呆気なく打ち砕かれ、利用するだけ利用する奴らへの怒りがMAXに達した時、遂にイリスは。。

"そんな大胆なことをするような人には見えなかった"
おとなしい人間が犯罪を犯した時のコメントあるある。違う!おとなしい人の声を聞こうとしなかったから、こんなことになったのだ。

こっちが黙っているからって、あいつらのいいようにされてたまるか!

イリスの心の叫びが聞こえた。

どうすればよかった??

男に頼らず、家を出た兄弟にもう少し頼れなかったのか。
母親に見切りをつけて自立していれば。。

'たられば'は、虚しい。

ラストシーンは、さながら火曜サスペンス劇場のようであった。(関係ない巻き込まれた男が不憫…)

話は飛ぶけれど、SNSの普及と共に簡単に欲深い大人が右も左も分からない年端も行かない若者を誘い出して食い物にできる世の中になってしまった。
他所ごとでなく、身近でもそういう話は聞こえてくる。
若者達は、自分を大切にする生き方をちゃんと学ばなければ。。

タイムリーでもあり、とても悲しい気持ちになった。
あーさん

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