あーさん

哀れなるものたちのあーさんのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

既成概念からの解放


伸るか反るか⁉️

こんなに緊張しながら映画館に観に行った作品は久しぶりかも。。期待と不安が半々。
ジェットコースターに乗る前みたい!

ヨルゴス先生の作品は、気になりながら全部スルーしてきた。

いやいやいや!Filmarksをやってて良かった!
きっとやっていなかったら出会えていない。。

クストリッツァやアピチャッポン、ベルイマン、ホドロフスキー、タルコフスキー、カウリスマキ、ウェス・アンダーソン、、いずれもここで出会った素敵な監督達♪
ヨルゴス先生もその仲間入りを果たそうとは!!

ものすごい作品だった。
時代設定(1930年と言いながら、乗り物が空飛んでる未来感⁈)、物語、テーマ、キャストそしてアート。 どれをとっても完璧だった。

考察以前に言葉が追いつかなくて、思いつくままの感想しか書けないけれど、監督は男性なのにここまで女性の立場を想像して描けるのは何故⁈
いわゆる恋愛とか家族とか、起こりうる状況をぶっ飛ばしてくる設定。その裏に潜むテーマ。 
ありがちなフェミニズムの概念なんかもひっくり返してボコボコにして、男女とかそういうのを飛び越えて人間讃歌。

特殊な状況ながらゴッドに命を救われ愛されてスクスク育ち、やがて性に目覚めるベラ。ダンカンとの冒険旅行で本能全開の性を満喫、語彙を増やし、人間関係の機微を知り、読書から知性や教養を身につけ、次第に大人の女性として地に足をつけて生きるようになる。自我を獲得したベラは、誰かに寄りかかるのではなく、手段はどうあれ自分の力で生きることを学ぶ。どんなことも糧になる。
"自分で稼いでるわ!"とダンカンに言い返すシーンが気持ち良い!
それとは逆にベラを支配していたはずのダンカンが、自分を見失い憔悴していく様が気の毒なくらい…。男性も男らしくあらねば!という固定観念に支配されている⁈

どうしたってベラのようにはできないけれど、少しでもそのエッセンスを自分に取り入れたい!!
既成概念をひっくり返せば、囚われの身ではなく幸せになれるよ!って作品からのエールを私は受け取った。それは男も女も一緒!

あまり情報(特に映像)を入れないで観たのもあって(正解!)141分間、先が読めずずっと画面に釘付けになった。袖の膨らんだひと昔前を思わせる?ベラの衣装(でも、何故かミニ笑 そしてエマ・ストーンのスタイルの良さ♪)、ロンドン、リスボン、パリの街並み、豪華客船や家のしつらえ、そしてベラの表情。映像が本当に美しい。どこをどう切り取っても画になる。
何かが起こりそうな不安を掻き立てる音楽が、またふわふわした作品の輪郭をなぞるかのようだ。

エログロ?いえいえ、その要素はあるものの、それは枝葉でしかない。ドキドキはしたけれど、そこまでの不快感は無かった。(そう言えば、昔少女マンガで"ドクターGの島"というのがあって、それを思い出した…)
ベラが成長していく姿を追いかけるのが、楽しくて仕方なかった。次はどうなるの⁈
最後の夫の件は蛇足かな?と一瞬思ってしまったが、、あのままハッピーエンドも違うのか?親(ゴッド)と同じことをしたということか?掴みかねるけれど、不思議な余韻…。
ヨルゴス先生には舌を巻くばかり。。(というか原作があるのね、どうアレンジしているのか気になる…そこの解釈は今は保留!)

以下、印象に残ったシーン。

急にベラが変なダンスを踊り出してダンカンが慌てて一緒に踊る所。声出して笑っちゃったよ!止まらなくて困った笑 これは何回観ても笑える!

豪華客船からアレクサンドロスの街の不幸な人々や赤ん坊を見て、ベラが悲しくなる所。ベラが自分以外の人々の苦しみを知る瞬間。

"熱烈ジャンプ"してても悲しくなるって娼館の女主人に訴える所。女から選べないの?全くもって素朴な疑問!

ベラがマックスにプロポーズする所。女だからって待たなくていい。したかったら自分からプロポーズするのだ♪

ラストの方で、今際の際のゴッドとマックスとベラが横たわって寄り添っている場面が途方もなく好き。ゴッドのベラへの愛が、必要とし合う三人の魂が、本当に愛おしい。。

その他にも沢山あるのだけれど、それはいつもベラが成長を遂げる時。前とは違う感情を持ったり、新たな発見がある時。何にでも果敢に飛び込んで、自分のものにしていくそんなベラがとても眩しくて、羨ましい。。

これは、主体性を取り戻した一人の女性の冒険&成長物語。ヘンテコ要素はそのお飾りに過ぎない。だけど、そのヘンテコ要素がまた楽しいのだ!何?この新感覚⁉︎
"大人の絵本"って書いてた人がいたけれど、そんな感じなのかな。。
エマ・ストーンの体当たりの演技も相まって、恐ろしく完成度の高い作品だと思う。

もっと深く掘り下げたいけれど、そんなことしてたらキリがないので、、とりあえずの感想。
個人的には、"哀れなるものたち"とは'既成概念に囚われている人たち'を指すのだと思った。男女の区別なく。

ヨルゴス先生、次回作にもう取り掛かってるらしいけど、今作の上をいくものができるのか⁈ 今から楽しみでならない。

過去作も追いかけなくちゃ!!




**2024.2.4に少しだけ加筆しました。
"哀れなるものたち"が男性を指していると書いてらっしゃる方がいらしたので、私はそうではないと思い、付け加えました。
今作のテーマは、もっともっと深いと思います。
価値観が多様化するこの時代、私もまだまだ意識が揺らいでいて、これから継続して考えていきたいテーマでした❗️
あーさん

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