あーさん

枯れ葉のあーさんのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
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2017年の"希望のかなた"を最後に引退を表明してから、私を含めファンには待ちに待った6年ぶりの復帰作。
昔の恋人に会いに行くような心持ちで、ドキドキしながら劇場に向かった。

2015年にFilmarksを始め、2016年にアキ・カウリスマキ監督作と出会ってから13作品ほど観てきたけれど、やっぱり時代がどんなに変わろうと、人の温もりだったり、理不尽さに立ち向かう勇気だったり、淡々と無表情な中にも愛を忘れない、そんな世界観がそこにはあった。

終わりが見えないロシアのウクライナ侵攻、連日報じられるガザ地区の悲惨な状況。
何気ない日常を壊される事が、どんなに辛いことか。。普通に生活したいだけなのに!
カウリスマキ監督の中の何かが動いた。

ミニシアターの良さは、観客の息づかいが近くに感じられること。大きなシネコンで観る時は、日本人だからなのか??笑ったり泣いたりする事がどこかためらわれる節があるけれど、今回は違った。"ニューシネマパラダイス"みたいに、シアター内の皆で観ている感覚。大きな声で笑う年配の男性がいて、それにつられて皆思い思いの所で反応する。そんな心地よさ。
狭いロビーではカウリスマキ監督のインタビュー記事が所狭しと貼ってあり、それをスマホで撮る人や、一生懸命読む人。
今作の公開記念で"愛すべきアキ・カウリスマキ"(2023.12.9〜2024.1.12)と銘打って過去作が上映されているので、そのポスター(サイン入り)が貼ってあったり。すっかり劇場が、カウリスマキ色に染まっていた♪

ヒロイン アンサ役のアルマ・ポウスティは、少し前の映画"トーベ"でブレイクしたフィンランドの女優さん。余計なものを削ぎ落とした中に凛としたものがある感じは、歴代のカウリスマキ作品のヒロインにも通じるところがあって、なかなか良い。(今のアイコンは今作のポスターの彼女)
ホラッパ役のユッシ・バタネン(名前がまたイイ!)もフィンランドでは有名な役者さんで、これまたカッコいいのにちょっとダサい感じがなんとも言えない!(マッティ・ペロンパーとはまた違った魅力♪)

そして、ちょっと変わってて情に熱い友人達が登場するのも、これまた通常運転。

ワンコが良い味出してるのも、全体の雰囲気は暗いのにどこかオシャレなのも、やっぱりカウリスマキ作品だなぁと思わされる。
ブラウスとコートの色合わせ!
紺色のトレンチコート!
昭和のレナウンのようなコーディネートが楽しい。

そしてそして、いつもながらサイコーなのが音楽♪
若い姉妹ユニット、マウステテュトットの歌の歌詞が何とも言えず作品の暗さにマッチしてて、ドンピシャ!
シューベルトのセレナーデ、チャイコフスキーの交響曲第6番"悲壮"なんかも使われてて、ほんと音楽のチョイスとかタイミングとか絶妙だなぁ。
竹田の子守唄とか、監督何で知ってるの⁈

そんなこんなで、久しぶりに劇場で味わったカウリスマキ・ワールド。

解雇、失業、アル中、交通事故…内容はめちゃくちゃ暗いはずなのに、どこかほっこり感もあり、"生きてさえいれば何とかなる"と思えてくる。

そして、歳を重ねるごとに失うものと得るものがあるけれど、歳をとる事が怖くなくなって来るから不思議だ。。

今年最後に今作を観る事ができて、とても良かった。
沢山でなくていい、少しのものを大事にする生き方をしていきたい。




**今年最後の投稿になりました。
個人的に後半から畳み掛けるように家庭内で大変な事が次々と起こり、人生って試練の連続だな、、としみじみと感じる事が多かったけれど、少しずつそれらを受け入れて、前に進めるようになって来ました。(全く解決はしてませんが💦)
どんな人も人生は大変なんだ…と腑に落ちたから、しんどいのは自分だけでなく"生きる"ってそういう事なんだよねって思える自分がいます。
戦争下にいる人達も、居場所がなくて不安な日々を過ごしている若者にも、時代に取り残されて孤独な日々を送っているお年寄りにも、皆に等しく幸せが訪れますように。。

フォローして下さっている皆様、本年度は大変お世話になりました。
今年は良い映画が多かった気がします。
来年はまたどんな作品と出会えるのか、今から楽しみです♪

来年もどうぞ宜しくお願い致します🙇‍♀️


良いお年をお迎えください。。
(ここから大掃除とおせち作りに入ります!🧹🍳)



追伸
パンフレットがとってもオススメです!
あと私は数年前にネットでなかなかの高値でカウリスマキ全集を買ってしまいましたが、この度新しく出たものが適正価格で劇場にて買えます!(早まったー💦)
あーさん

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