再鑑賞。
ゴダール映画史において第三章に突入した二作目。
この時代になるとゴダールの映像表現は更なる進化を遂げ、新たな世界をみせる。
絵画や音楽などの芸術と比較すると映画は随分遅れている。ゴダールは映画を高次元へと押し上げようとするが、芸術性を高めるほど娯楽性が失われ、退屈で眠くなるのが映画だ。
フェリーニの「81/2」のように映画作りに苦悩する監督を主軸に、撮影現場のスタッフ、工場の労働者、ハンナとイザベルという二人の女性、そして映画「パッション」の世界を描く。
「物語はつくるのではなく生きるもの」
映画監督のジェルジーは「パッション」の物語を作らない。役者の表情や衣装、セット、全体的な構図に物語がある。
「影というものは存在しない。光の反映でしかない」
ジェルジーは「光」にこだわる。全体のコントラストを崩す部分的な光に「違う」という。完璧主義者の「光」の探求だ。
レンブラント、ドラクロワ、ゴヤなどの絵画を生きた人間で再現。その映像に度肝を抜かれる。ピタリと動きを止めた役者たちによるサイレント・ムービーであり絵画である。
「イザベルの物語」と「パッション」を分けて、二本の映画にしてほしかった。
名画の再現映像にナレーションをつけて一本の映画にしていたなら、セルゲイ・パラージャーノフのような衝撃と感動があったと思う。