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恐怖分子のunkoのレビュー・感想・評価

恐怖分子(1986年製作の映画)
4.1
かなり面白かった。
アマチュアカメラマンのシャオチェン(リウ・ミン)はある朝死体を発見し、現場から逃走する女性シューアン(ワン・アン)をたまたま目撃して写真に収める。
時を同じくして家庭がうまくいっていない医者の夫リーチュン(リー・リーチョン)と小説家の妻イーフェン(コラ・ミャオ)の元に電話がかかってくる…。

群像劇になっていて、後半物語がクロスしていく。
ただクロスするといっても、本当に表面だけで、触れるか触れないか程度の重なり具合で、それが面白い。
演出や設定もそのように。何か背景がありそうなさそう…、シナリオの進みも画面で見せてくれなかったりが絶妙。
主軸は医者の夫リーチュンと小説家の妻イーフェンなので、付随して捜査と友人を担うクー警部(クー・パオミン)の活躍も目立つ。
風貌といいこの映画に抜群の配役。この人のシーンだけ服装も含めて独特な空気感とシリアスが混在していて面白い。
またアマチュアカメラマン、シャオチェンの暗室の表現と飾られる写真のイメージは相当クールでカッコイイ。

機微な変化が広がっていく最終盤はついにそこまで浸食するかという部分にまで達する。
黒沢清監督が参考にした(真似した)と豪語するだけあり、夫であるリーチュンは「蛇の道」の香川照之のような哀愁と狂気、愛が交じり合ったキャラクターになっている。

途中、妻の独白のインパクトもすごかった。真正面に捉えて、なんちゅうこと言ってくんねん笑
自己中にも限度というものがあってね…、夫のキャラクターには同情します。

そして最後のオチ。相当皮肉っぽくて凄かったです。多重に意味を持たすのは唸る。
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