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レナードの朝のろのレビュー・感想・評価

レナードの朝(1990年製作の映画)
4.7
「人間の心はどんな薬よりも強い」


あと少しで2016年も終わりですね。

みなさんの映画ライフは充実していましたか?
私はたくさんの作品に出会えた1年でした。
いろんな物語に涙し、励まされ、明日も生きようと思えました。
今作に登場するレナードからもたくさんの希望とパワーをもらった気がします。


この物語の主人公は人見知りだけど人が好きな医師セイヤー先生。彼は1人の患者レナードに出会います。レナードは脳炎後遺症を患っており、植物人間状態でした。
ある日、セイヤー先生は脳炎後遺症の患者たちに反射神経が残っていることに気付きます。そしてなんとか彼らを回復させることが出来ないか、模索し始めるのです。

誰もが諦めていたことに挑戦したセイヤー先生。

そんな彼の姿に病院の職員たちも心を動かされる。
治療に使う高額な薬のためにカンパする場面。
次々と小切手を渡しに来る職員を見ていると、とても温かい気持ちになります。


そして薬が効き、レナードは30年ぶりに目覚める。
お母さんと抱き合う場面は本当に素敵です。
しかし失った30年は大きい。
レナードは鏡を見てガッカリします。
「ぼくはこんなにおじさんになっている」

他の患者たちにも薬が投与され、回復していきます。
「意識はあったけれど、今まで動けなかったわ。それが今朝は1人でトイレに行けたの」
嬉しそうに語るおばあちゃんを見ると、こちらまで嬉しくなって涙が溢れます。


しかし、しばらくすると副作用が出てきてしまう。
激しい痙攣(チック)の症状に襲われるレナード。
それでも彼が口にする言葉はたくましい。
「新聞を読んでみて。悪いことばかりが書いてある。生きるってことが何かを人は忘れている。人は感謝していないんだ。仕事や遊び、友情、そして家族に」

「僕は生きる喜びを感じる。生きる自由や驚きもだ」

ダンスホールで踊る患者たち。
音楽にのって、楽しそうに体を動かす。
とても儚く、美しい場面です。


「仕事、遊び、友情、家族。何より大事なことなのに、我々は忘れていた」
薬の効き目が切れて また元の状態に戻ったとしても、その人の存在は消えない。レナードはセイヤー先生の心の中で生き続けている。そして、セイヤー先生にとても大きな影響を与えてくれたんですね。それがラストシーンに凝縮されていると感じました。


生きていること、ただそれだけで素晴らしい。
ろ