ろ

マイノリティ・リポートのろのレビュー・感想・評価

マイノリティ・リポート(2002年製作の映画)
5.0

犯罪を予知することが可能になった2054年のワシントンは、地下鉄に乗るにも服を買うにも網膜認証が飛び交う。
街に溢れるスクリーンは「犯罪予防は有効です。このシステムは間違いを犯しません」と人々に訴える。
そんなある日、警察官のジョンは計画殺人の犯人として予知されてしまい・・・

「ニックオブタイム」を思い出したのは、たくさん時計が出てきたからだろうか。
時間に追われ、同僚の警察官に追われるジョンは、息子を失った過去から逃れられないでいる。

麻薬常習者の彼が、同じく麻薬常習者の親を持つアガサと逃亡する場面。
カラフルな風船は隠れ蓑になり、ホームレスに渡したわずかなコインが二人を救う小さな伏線の畳みかけが気持ちのいい。

スパイダー偵察隊がアパートを走り回っても、やむことのない痴話げんか。
目が見えなくてうっかり頬張ってしまうカビだらけのサンドウィッチ。
空気銃も新聞もハイテクなのに、わざわざ素手で着けなあかんのやと笑ってしまう拘束具”天使の輪”。
無機質でもスタイリッシュでもない。それどころか汚い氷風呂やゲロや、なにかが腐ったような匂いすら感じる。だからこそ、クライマックスでアガサが語り聞かせて”見せて”くれる幻の未来が、ひときわ輝いて見える。


( ..)φ

狂ったようにディストピアを読んでいた時期があった。

朝目覚めてカーテンを開け、コーヒーを淹れようと火にやかんをかけ、ざっと新聞に目を通す。そうこうしている間にあれよあれよと政府の陰謀に巻き込まれていく・・・
のどかで穏やかな日常に潜むちょっとした違和感。その違和感がどんどんサスペンスフルになる鮮やかさがあまりに気持ちよかった。

毎日懸賞を解いてただけなのになぜかエイリアンに着地する話や、スタンドバイミーとボディスナッチャーをかけ合わせたような話・・・
ディックの物語は「ツインピークス」のような気持ち悪さを持ち合わせている上に、とてつもなく映画的でおもしろいのだと再確認した「マイノリティリポート」だった。
ろ