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レナードの朝のぜんのレビュー・感想・評価

レナードの朝(1990年製作の映画)
4.4
【30年ぶりに奇跡の目覚めを果たした患者と医者の実話】

原作『Awakenings』を執筆した
オリバー・サックスという実在する人物を
モデルにした実話。
サックス医師は2015年に82歳で
亡くなられたそうです。
ご冥福をお祈りいたします。


*あらすじ*

嗜眠性脳炎によりパーキンソン病になった
20人の患者と病気の回復に立ち向かう
セイヤー医師の物語。

セイヤー医師(ロビン・ウィリアムズ)は
誠実で親切な人柄だが、彼自身は人との関わりは苦手としていた。

元々植物の研究をしていたセイヤー医師。
新しい仕事の面接に来た際にも当然
同じような仕事をすると思っていた。
しかし面接を受けた病院では医師としての
採用であった。

彼が担当していた患者は何十年もの間、
彫刻のように固まってしまった人たちだった。
彼はある日患者にボールを投げたら
反射的に受け取ることに気づいた。
ある者は音楽を聴くことでご飯を食べ、
ある者は床を黒く塗りつぶすことで歩いた。

患者たちの行動パターンから
1920年代に流行った嗜眠性脳炎による
パーキンソン病を発症していると気づく。

セイヤー医師はパーキンソン病の治療薬
「L-ドーパ」を投与しようと考える。
30年寝たきりだったレナード(ロバート・デ・ニーロ)は投与した次の日の朝30年ぶりに奇跡的に目覚めるのだった。

*総評*

2大主演の演技は素晴らしかったです。
ロビン・ウィリアムズは他の作品でも
医師役が多い印象ですが、
本作でも誠実に患者に対して接する医師を
見事に演じきっていました。
ロビン・ウィリアムズの笑顔は観る人を
穏やかで優しい気持ちにさせてくれます。

そしてレナードを演じた
ロバート・デ・ニーロ。
全身が痙攣して少しずつ動きがぎこちなく
なっていく患者の演技。
もはや演技とは思えないほどでした。
30年ぶりに目覚めて新しい景色を見て
恋をして嬉しい感情。
それが永遠に続くものではないと気づき、
窓の外を見る悲しげな表情。
思わず感情移入してしまいました。

そして患者と医者という関係ながら
レナードとセイヤー医師の友情も
素晴らしかった。
自分のことより他の患者のことを心配する
レナード。
自らを記録させ、実験台とすることで、
同じ患者の不安を無くしてあげたいという
優しい心。
誠心誠意病気に向き合ったセイヤー医師に
だからこそ必ず解決の糸口を見つけてくれると
信頼したから協力したのかもしれません。
そんなレナードに薬を与えて解決法を
模索するセイヤー。

「命を与えて奪うことは親切な人か」

彼の人間味が溢れる言葉だった。
何としても患者を救いたいが、
無力さを感じてしまう。
現実は厳しいものだ。
意志と結果が必ずしも
同じになるとは限らない。

ハッピーエンドにならないことも
この映画が今でも語り継がれている
ことに繋がっているのかもしれない。

現実では数十年ぶりに目が覚めた。
それは患者も家族もハッピーに
決まっている。
そう思う人もいるかもしれない。

だが、時の流れは残酷だ。
街の風景は変わり、
鏡の前には見ず知らずの人が立っている。
身体だけ時の経過とともに変化して、
内面や記憶は数十年前で止まっているのだ。
なかなかその現実を受け止めることが
できないだろう。

この映画やレナードの言葉から
多くのことを学びました。
私たちが当たり前に毎日を迎えられていることは
実は当たり前ではないこと。
永遠の時間なんてものはなく、
限られた時間軸の中で私たちは生きていること。

それを自覚することによって
私たちは日常でのくだらない不満を言うより、
日々生きていることの素晴らしさを
感じられるようになるのではないかと思う。

ダンスのシーン素晴らしかったです。

生きることについて考えさせられる
大切な作品になりました。


「人間の精神力はどんな薬よりも強力です。その力は仕事、遊び、友人、家族によって養われます。それが一番大切なことです。」
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