an0nym0us

ロスト・イン・トランスレーションのan0nym0usのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

初恋の人に伝えられなかった『好きです』みたいな…もどかしさと切なさと自己嫌悪を思い出させるような作品でした(苦笑)

外国人の視点で見る、東京という異世界。
それは…私から見た『他者』でもある。

個人的に、この作品から見えるものは…
自分と他者との関係の在り方と、深く解り合うことは不可能なんだろう…という寂しさ。

自分という、決して逃れられない檻。
その外側にいるのは…過ごしてきた時間、環境、考え方…何もかもが違う存在。

似ているけど、違うもの。
それを理解しようとすること。

それは言葉を意訳する事にも似ていて…
『他者への認識』にも似てる。

『この人はこんな人』という自分の認識。
どう捉えるのか、どう解釈するのか…

違うからこそ愛おしいという人もいる。
理解なんてできないと嘆く人も。

東京という街で隣り合った二人。

話す言語が同じという共通項があっても、夫や英語を話す人々とも食い違っていた。

言葉が同じだろうと、何を考え思っているのかは通じない…そんな描写。

スカヨハを悪くいうつもりはないし、今作の演技に好感を抱きましたが…私はこの作品、主演女優を日本人にして欲しかった…なんて考えました。好みの問題です(笑)

通じない、繋がらない…

人は孤独だ…

自我という檻の淵から外界を見てる。

それなら尚更のこと、違う言語を話す二人という描写で見せて欲しかった。

何もかも違う二人。
でも、互いに抱えている孤独や寂しさ。

その心、感情…共感。それが響き合って、相手への僅かな理解が生まれる。

言語を暗喩的に使うなら…拙い英語で成り立つ会話なんかも、希望を想わせてくれるのにな。

作品とは趣旨が違いますが…
こう思った事があります。

言葉が堪能になればなるほど…
言葉に偽りが含まれてしまう。

拙いけれど精いっぱい、伝えようとする言葉は…とても純粋だなって。話す人そのものが出てくると思うんですよね。

技量として、偽れない…でも、相手に伝えようとする意思の純度はとても高い。

それって尊いなって。

話を戻しますが…言葉が主役の作品だったからこそ、ラスト間際の二人の抱擁に、圧倒的な力強さを感じさせられました。

別れ難い感情の表現。
どんな言葉で言い表すよりも具体的で、高い純度で相手に届く…『行動』でした。

近年、何もかもをスマホで済ませている現代人な私たち。多くのやり取りはメールなどの文面になってませんか?

言葉さえも手放すのだとしたら…
抱き締めるなんて、できなくなりそう。

そんなのイヤだな…
なんて、これも個人的な解釈。
他の誰かのものじゃない。

作品からでも、文面からでも、ほんの僅かにでも…私と同じような事を感じてくれた人がいたら…嬉しいな。祈りみたいな気持ち。

口に出した瞬間から、書き出した瞬間から…
その中の自分はどんどんとロストしていく。
誰かの心に、永く留まるには…
どうしたらいいんでしょうね?

柔らかな情緒と余白。
けっこう好みな作品でした(*´꒳`*)
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