シズヲ

座頭市鉄火旅のシズヲのレビュー・感想・評価

座頭市鉄火旅(1967年製作の映画)
4.3
「市が訪れた町で騒ぎに関わり、悪どいやくざを叩き斬る」という大筋自体はこれまでの話と然程変わらないんだけど、特殊な状況と手堅い構成のおかげで十二分に楽しめる。

仕込み刀の限界というシチュエーションが加わることで居合に制限が生まれ、シリーズ恒例のやくざとの揉め事にもある種の緊張感が生まれているのが上手い。かといって過剰なもどかしさがある訳ではなく、いっつぁんの凄みのおかげですんなりと見ていられるのも良い。刀鍛冶との交流で伏線を張っていたおかげで、終盤にいっつぁんが新たな仕込み刀を手にする流れもしっかりと納得できる展開になっている。あと、摘まみ食いや踊りの場面などいっつぁんのユーモラスなシーンもちらほらあったのが好き。

終盤に訪れた雪景色の中での殺陣も工夫を凝らしていて良かった。いっつぁんの満を持した居合はカタルシス抜群だったし、敵も対いっつぁんの戦術を編み出して対抗していたのが面白かった。作中に渡って卑劣な憎たらしさを発揮していた敵の親分も悪役として申し分無く、それだけに最後にいっつぁんに斬られた時のスッキリ感も素晴らしかった。

仕込み刀が使えないということもあり、一度は堅気に戻ることも考えたいっつぁん。だけど彼はやくざで、結局誰かを斬ることになるっていう哀愁は相変わらずグッと来る。余談だけど、『兇状旅』でいっつぁんの仕込み刀を普通に折ったおたねさんの男は何だか凄い。
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