恐怖の迫り方やヒロインと怪物(殺人鬼)の置き方などハリウッドの古典的スリラー映画のスタイルを敷衍しているよう。あとやっぱり『悪魔のいけにえ』か。理由なき殺人鬼の異様さを松重豊の身長に全振りしている。衣裳の感じからして嶋田久作に見えてしまう。
松重豊の殺し方がだいたい鉄パイプや金属バットなどの鈍器で、何かを梃子にして腕や脚を折るときの軽めの音だったりスチールのロッカーの下の方からだばーっと血が流れてくるなど何となく笑える要素を盛り込んでる。そこに大杉漣が大きく貢献してる。
スクリームビューティーというより勇敢なヒロインタイプである久野真紀子は下手だけどそんなことはどうでもよろしい。会話シーンも含め小津作品的な正面ショットを多く撮られている。閉じ込められた資料室のロングショット長回しや、序盤のほうで同僚の男が閉めた扉にカメラを残す感じなどは黒沢清作品らしい不穏さがあるのではと思った。閉められた扉のショットが何度も出てくる。
ゴヤの「我が子を喰らうサトゥルヌス」の複製ポスターが2回映る。松重豊がそのポスターに目を止めたので、殺した相手を食べてしまうんだろうかと思ったがそういうことはなかった。
ラストの久野真紀子の退場の仕方はなんか意味あるのかしら。あと由良宜子は『三月のライオン』と本作が同じ年公開で、全くタイプの違ういかにもバブル期の脇役OLという役だったがやっぱり可愛い。
スタッフに青山真治と井口奈己の名前があった。