松原慶太

アラバマ物語の松原慶太のレビュー・感想・評価

アラバマ物語(1962年製作の映画)
4.2
いや〜〜。掛け値なしの名作ですね。この邦題でなんとなくホンワカした感動ヒューマンストーリーを想像し、敬遠していたことを後悔しました。

原題は「To Kill a Mockingbird(モッキングバードを殺すこと)」。見ているうちに意味は分かる。

舞台は1930年代のアメリカ南部。ある事件で黒人被告を担当することになった良心的な弁護士(グレゴリー・ペック)が主人公。といっても、ありがちな法廷物ではありません。物語は、グレゴリー・ペックのふたりの子どもを語り手として進行します。この構成がじつに秀逸。

あくまでも子どもの視点から、事件のあらましとか、それをとりまく町の雰囲気とか、不気味な隣人のエピソードが語られます。それゆえ事件の中身にサクサク入っていく感じではなく、まだるっこしい部分もありますが、やがてその構成の妙に気付きます。

この話、黒人の事件をめぐる法廷劇であるとともに、子どもたちの成長物語でもあるんですね。見終わったときに、なにかたしかな手ごたえが残る作品です。
松原慶太

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