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新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君にのshxtpieのレビュー・感想・評価

4.5
反吐が出る。と同時に、涙がこぼれる。あまりにも露悪的(そして自罰的)な表現の数々と、映画が進むにつれ自壊していくかのような編集、そしてシンジと人類補完計画に仮託された庵野秀明のナイーヴさや幼児性に、である。他人には見られたくないじぶんの汚らしい部分が曝け出されているかのようだ。

この劇場版も含めた『新世紀エヴァンゲリオン』という作品は、ごく表面的に捉えれば、非常に幸福な終わりを迎えるポジティヴな物語である。それは、大塚英志が「自己啓発セミナー」と批判したように、碇シンジという少年がじぶん自身を肯定する物語であるからだ。

とはいえ、インターネット上に氾濫する「考察」や「分析」という名の表面的な物語の理解にだけとらわれている必要はない。『新世紀エヴァンゲリオン』が持つ射程範囲の広さ、含意の深遠さはあまり過小評価されるべきではない。相当な読書家であり、アニメと漫画と映画と特撮映画を愛する庵野秀明の百科全書的な知識を惜しみなく披瀝した(それゆえにいやらしくもある)オマージュと引用の海に溺れる必要もない。むしろそこから立ち上がる、ユダヤ教とキリスト教と神道と仏教を綯い交ぜにした宗教的含意、哲学的含意、精神分析学的含意にこそ、いまは思索を深めるべきである。

ともかく。(新劇場版ではなく)テレビシリーズとこの『Air/まごころを、君に』は、テレビアニメやアニメ映画という枠にとらわれない、20世紀末のフィクションを代表するまぎれもないマスターピースである。
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