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エターナル・サンシャインのshxtpieのレビュー・感想・評価

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)
3.5
アリアナ・グランデのニューアルバムは、シングル“yes, and?”を聞くかぎり、すごいことになっていそう。前作“Positions”がまあまあだっただけに、たのしみ。

そして、そんな新作のタイトルは、なんと、“eternal sunshine”なのだ。アルバムのリリースをアナウンスする前に、実は、“yes, and?”のビデオに伏線があって、そこに登場する赤い手紙にモントークの緯度と経度が記されていた、という手のこんだことまでされていた。それにしても、こういう引用やオマージュをするタイプのひとだと思っていなかったから、最近のアリには何度も驚かされている。

さて。忘れ去られつつある不毛の2000年代の映画において、クラシックとして生き残っている『エターナル・サンシャイン』は、1990年代にミュージックビデオの作家として知られたミシェル・ゴンドリーの代表作だ。ゴンドリーと仲がいいらしいスパイク・ジョーンズもミュージックビデオの監督から映画の世界にいったひとで、彼がのちに『her』を撮ったことを考えると、二人にはかなり近いものを感じる。

『エターナル・サンシャイン』には、かなりミュージックビデオ的な撮りかたや演出を感じる。今ではY2Kみを強く感じて、ノスタルジックではあるけれど、ゴンドリーの発想は豊かかつ独創的で、当時、映画に新しい風を吹きこんだことはたしかだろう。こういう感覚が忌み嫌われた理由も、わからなくはないけれど。

揺れまくるカメラ、変わったアングル、ホラーもSFもとりこんでクロスオーバーさせるエクレクティックな映像と、ふつうの映画監督がやらないようなアクロバティックなことを、ゴンドリーはやる。これが、斬新だった時代もあったのだ。余談だけれど、今だと、マーク・ウェブのイタさがいちばんキツいかもしれない。

それにしても、キャストがものすごい。ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、イライジャ・ウッド、キルスティン・ダンスト、マーク・ラファロ……。今じゃあ、こんな俳優たちをひとつの映画に集められないだろう。

チャーリー・カウフマンによるツイストしたストーリーや構成も、SFやコメディをとりいれつつもロマンスに着地させる、というかなり折衷的なものになっている。このひねくれかたにも、2000年代的なものを感じて、なんだかなつかしい。重要なのは、匠ジョン・ブライオンが音楽をやっているということ。

映画.comの古い記事を漁って読んだ、製作についての公開当時の記事がなかなかおもしろかった。タイトルの元ネタ(劇中でも言及されるアレグザンダー・ポープ)とか、ジムがいつもの役柄とちがうから、カメラを回しっぱなしにして、素の姿を撮っていたこととか。

それにしても、アリの最近のプライベートでの出来事を思うと、この映画を参照したことに、なんとも複雑な思いを覚える。
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