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デジモンアドベンチャーのshxtpieのレビュー・感想・評価

デジモンアドベンチャー(1999年製作の映画)
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名作短編アニメーション。

三本立てのうちの一本(東映アニメフェア! 入場特典でカードをもらえたのがうれしかった)として子どもの頃に映画館で見た時は、キャラクターデザインも作画も映像も、自分が知っている『デジモン』とはまったくちがうことにちょっと違和感を覚えつつも、「すごい!」と圧倒された記憶がある。当時の私が夢中になっていたのが『デジモン』だったからとはいえ、ほかの二本のことはすっかり忘れてしまったのに、『デジモンアドベンチャー』の印象はいつまでも鮮烈だった。

それ以来、見ていなかったと思う。うそ。10代後半くらいでまた見たくなって、インターネットに違法にアップロードされていた動画を見た気がする。

言ってしまえば、この『デジモンアドベンチャー』は、『ゴジラ』と『童夢』と『AKIRA』と『平成狸合戦ぽんぽこ』と『新世紀エヴァンゲリオン』(の1、2話)のあわせ技だ。それらをマッシュアップさせて、『デジモン』のキャラクターを操り、ラヴェルの“ボレロ”にのせて物語った。しかし、それだけじゃなくて、やっぱり、細田守らしい細やかな演出と滑らかで洗練されたアニメーションが光っているからこそ、高く濃い完成度を誇っている。

緻密な描きこみによる光が丘団地の背景、団地のミニマルな連なりと閉塞感、夕暮れや自販機などの時間と光の表現、TVシリーズよりも断然モンスターや怪獣に寄ったデジモンたち……。魅力は数多い。一定のテンポの進行感、反復感を醸成する“ボレロ”とともに展開していくドラマには、スピード感がある。ほんとうに見事だ。

TVシリーズの前日譚という体裁は保ちながらも、それとほとんど無関係に独立した、優れた短編アニメ。
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