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うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーのshxtpieのレビュー・感想・評価

4.0
めちゃくちゃひさしぶりに見た。はじめて見た時は、『うる星やつら』のキャラクターのことをよくわかっていなかったので(まったく世代ではないから)、各キャラの個性や役割、固有名詞、その記号性を把握するのに時間がかかったし、面食らったことを思いだした(こういうのを外国人はどんなふうに見るのだろう?)。誰が誰なのかわからなかったわけだけれど、今ではしのぶ推し。

押井守が、自作の『オンリー・ユー』と二本立てだった相米慎二の『ションベン・ライダー』との対比から刺激を受けて、『ビューティフル・ドリーマー』をつくったことは、けっこう有名なはなし。つい先日も、その話題がXでまわってきた。ちょっと思ったのは、それはおそらくないだろうけれど、相米が『ビューティフル・ドリーマー』を見ていたのではないか、という可能性。というのも、『台風クラブ』との類似点が、複数あるから。無邪鬼は笑福亭鶴瓶だし、『東京上空いらっしゃいませ』にも似ている。押井と相米の、不思議な同期。

ほとんど『インセプション』と化していく後半は、若干失速する。前半がやっぱりおもしろくて、エッシャーの絵の巧みな引用が見られるあたりがピークか。押井らしい主観視点、シンメトリー、合わせ鏡、ぐるぐる回るカメラ、特徴的なせりふなど、記名性が前半でほとんど網羅され、開陳されつくしていることもある。『パトレイバー』や『攻殻機動隊』なんかは、後半もしっかりとおもしろいのだけれど。前半は、『うる星やつら』の夥しい数のキャラの個性のぶつかりあい、その群像劇、どたばた、ギャグなどの絡まりあいもあって、とてもバランスがいい。

序盤、蝶を画面にご丁寧に登場させ、「胡蝶の夢」をあからさまに暗示するところなんか、とてもわかりやすくて、非俗にすら思える。ただ、ちんどん屋、マネキンを積んだ車、風鈴の屋台など、夢に現実が、現実に夢が貫入する瞬間の幻想的な映像演出は、やっぱりものすごく巧みで見惚れてしまった。

ある種のゲーム性や遊戯性は、かなりクリストファー・ノーランっぽいし、直接的な影響を及ぼしているところでは、『涼宮ハルヒの憂鬱』とか、『魔法少女まどか☆マギカ』とか、それに『チェンソーマン』もあるな〜とか、見ていてだぶる作品があまりにも多すぎて、後世への影響がでかすぎる、と改めて思った。こういうSFをやろうとすると、どうしても『ビューティフル・ドリーマー』になってしまう、というトラウマのような作品でもある。

文化祭の前日が続く、というアニメ製作現場の暗喩であることとか、夢と現とは主観においては変わりがないという主張とか、幾重にもおもしさが積み重なっている映画。願いが叶うなら、この映画の前半に住んでみたい。

ラムちゃんが飛ぶ時の電子音、いいな〜。それと、やっぱり、この時代の声優たちの演技はすごい。それと、どうでもいいのだけれど、西武新宿線沿線に住む者として、めちゃくちゃ親近感がわく。「責任とってね♡」。
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