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デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!のshxtpieのレビュー・感想・評価

3.5
『ぼくらのウォーゲーム!』が名作なのは言わずもがな。『サマーウォーズ』が『ぼくらのウォーゲーム!』の再演であることは知られているとおりで、つまり、細田守は、ここでやりたいことをほとんどやりきってしまったのだ。

そして、こちらも東映アニメフェア! 当時は、『Vジャンプ』の誌面上でディアボロモンやオメガモンの情報が新しく公開されるたびに、わくわくしていたものだった。当然、入場特典のカードもめちゃくちゃうれしかった。

それはさておき、『ぼくらのウォーゲーム!』も、公開されて以来、見ていなかった。うそ。やっぱり、こちらもネットで見た覚えがある。

見直してみると、劇場版『デジモンアドベンチャー』よりも、『ぼくらのウォーゲーム!』のほうが、がっつり子ども向けの『デジモン』のアニメしちゃっているなと思って、ちょっときつく感じてしまった。お決まりのせりふ、効果音、挿入歌とか……。緊張感を弛緩させる細かいギャグが多くてうるさいな、とも。あまりのめりこめなかった。

とはいえ、それでも、細田らしい繊細さと流麗さはとても魅力的で、独特の描線やデザイン感覚、CGの巧みな導入、コントロールされた演出と演技は見事。春休み中という設定などを利用して、「選ばれし子どもたち」の中から描く人数を絞りこみ、物語をうまく動かせるように仕立てているものの、残りの4人をないがしろになどしていないところもうまい(空と太一の関係性など)。愛を感じる。ディアボロモンの悪行によるカウントダウンと太一の母が焼くケーキ、丈の入試を同期させているところも素晴らしい。太一が電話をかけまくっている間、太一の母にケーキづくりを光子郎が手伝わされているあたりが微笑ましいし、テンポやキレもいい。引きの構図もすごくいいものが多い。閉塞的な一室での、インターネット上の攻防を魅力的に見せる、というのは演出の力なしでは難しいだろう。あと、ヒカリの圧倒的なかわいさ(TVシリーズでも『02』でもこんなにかわいくない)。

応援やら悪口やらのメールを太一と光子郎に送りつけてくる世界中の子どもたちは、現在のソーシャルメディアやYouTubeなんかのありようそのもので、つらい気持ちになってしまった。その意味でも、先進性や先駆性、予見性は抜きんでている。
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