しろくま

キューポラのある街のしろくまのレビュー・感想・評価

キューポラのある街(1962年製作の映画)
3.5
2022.08.18/173/GYAO
東京の北の端から荒川鉄橋を渡ると埼玉県川口市。500を数える鋳物工場、キューポラという特色ある煙突。江戸の昔から、ここは鉄と火と汗に汚れた鋳物職人の街である。

吉永小百合さん主演の爽やかな下町純情映画って思って観てたら、貧困による負のスパイラルが凄まじい。昔気質の鋳物職人のオトンが失業。アルバイトをしながら高校進学を目指すが、オトンから〝いいか、ダボハゼの子は、ダボハゼだ。中学出たらみんな働くんだ〟って言われて、暴力を振るわれ…可哀そうすぎる。その上、ダンスバーでチンピラたちに強姦されそうになったりして、心がすさんで転落人生ってなりそうだけど、ラストは希望が持てる展開。

1962年公開の映画で、街並みはまるでリアル〝三丁目の夕日〟。知らない場所なのになぜか懐かしくて、思い描く昭和の原風景って感じ。なお、〝キューポラのある街〟という歌があるが、それは続編の主題歌で、本作では歌っていない。本作では、坂本九さんの〝手のひらの唄〟が挿入歌といて使われていて、職場見学で訪れた会社の女子工員達が歌い、後半のパートをソロで吉永小百合さんが歌っている。続編の〝未成年〟は、工場に勤めながら定時制の高校に通う様子が描かれているので機会があったら観てみたい。
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