アニマル泉

少年のアニマル泉のレビュー・感想・評価

少年(1969年製作の映画)
5.0
犯罪から現代社会を描く大島渚の傑作。実話を元に大島と田村孟が脚本を書いた。「投げる」映画だ。身体を車に投げ出す、突き飛ばす、当たり屋の物語であり、帽子や長靴や様々な物が頻繁に投げられる。よく引っ叩く映画でもある。
「食べる」映画だ。家族はよく食べる。食べる事と殴ることしか家族のコミュニケーションがないみたいだ。
「帽子」が印象的である。黄色い帽子、学生帽が少年の象徴になっている。
「赤」も大島の主題である。日の丸、血、赤い長靴。赤は国家や民族の象徴だ。北海道小樽市の雪だるまの場面が秀逸である。赤い長靴で作った少年のヒーローのアンドロメダの雪だるまを自ら壊す、美しく鮮烈な場面だ。映画の雪の名場面といえば本作とフェリーニの「アマルコルド」の雪の孔雀の場面を思い出す。
地蔵の山、葬儀の祭壇などの唐突な設定、シネスコを活用した大胆な端構図などいかにもATGだ。ワンシーン・ワンカットが基本。撮影は吉岡康弘と仙元誠三。低予算の日本縦断オールロケだ。音楽は林光。
大島の運びは省略が大胆だ。少年が家出から戻ったあとの諍いは省略する。家族の経緯もスチール写真構成とナレーションで端的に進める。メリハリが巧い。
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