唯

ねえ!キスしてよの唯のレビュー・感想・評価

ねえ!キスしてよ(1964年製作の映画)
4.2
こんなに嫉妬深くて束縛ばかりじゃ愛想を尽かされるぞと思いつつ、側から見ている分には滑稽で愛らしいオービル。
年下の若くて可愛い妻を持つとこうなるのは必然よね。

まるでサスペンスかの様な音楽が大仰ではあるが、オービルにとっては深刻な問題であることには変わりなく、彼の心理状態をコメディチックに表している。

冷静に考えれば、妻に事情を打ち明けて協力して貰えば良いだけなのに、それに気付けないおバカっぷりがまた良い。
自ら事態を複雑にしているのよね。
夫の思惑を、妻は夫への信頼と愛情で見事に交わして行くのもお見事。

それぞれの人物が各々の課題を抱えていて、それが交錯することによって笑いが生まれて行く。
まるで長尺のコントを見せられているかの様で、ビリーワイルダー、さすがである。

禿げ上がったジジイなのに健気で献身的な妻がいて、他の女にもモテてしまうという点は男のご都合主義感というか理想が入っているよなあ。

妻を守ることと曲を売ることが目的だったはずなのに、ポリーに気持ちが入ってしまってそんなことどうでも良くなってしまうという、どこまでも人間らしい。
男に丁重に扱われたことがないポリーはオービルに惹かれるし、心優しいオービルはポリーへの同情もあるのだろうな。
恋愛感情や性欲以外の理由で(その場を凌ぐため、大切な誰かを守るため、相手の心を癒すためなど)セックスすることってあるのよ。

そうした大人の事情を全て飲み込んで受け入れる女達が達観していて格好良過ぎる!!
男より女の方が何枚も上手で、男は手のひらの上でコロコロ転がされてる方が幸せなのだ〜という結末も洒脱。
知らぬが華かもしれないね。

ディノからの贈り物もあったりで、四方良しのハッピーエンド!
MGM!ビリーワイルダー万歳!!!
唯