唯

キャスト・アウェイの唯のレビュー・感想・評価

キャスト・アウェイ(2000年製作の映画)
3.6
トムハンクスがひたすらに身体を張り続ける。
無人島サバイバルというと、何故だか派手な冒険スペクタクルアドベンチャーの印象を持っているが、この作品は割と淡々としているというか。
一方メンフィスでは、という描写がないのがまた実録っぽい。
実際に一人で漂着したらこうだろうなというリアリティがある。

絶望的な状況でも、ちゃんとサバイブ能力を身に付けて行くのだから、人間とは凄い。
頭がおかしくなるこの状況で、気が狂うことなく、いくら怪我をしても生き延びている不死身さたるや。
火を起こすだとかある程度の科学知識がないと出来ないよね。
だから、男の人のサバイバルものが多いのか??

如何なる過酷な状況でも、人間が究極求めるものって他者との繋がりなのだよなと。
バレーボールを人として見立て、生きた相手としてコミュニケーションを取る様になって行く(そうでもしないと正気を保てないのだろう)。

4年も筏を作らなかったのは、ストレスフルな現状を変えるよりも海に漕ぎ出すことを恐れたからだろうなと。
そこもまた実に人間らしい。

サバイバル映画だけれど、この作品が本当に始まるのは帰国してからだと思うのよね。
帰って来たら浦島太郎状態。自分は死んだことにされていて、過去として葬り去られている。
時の人として取り上げられ、皆から歓待されるも、近しい人ほど戸惑いを隠せず、生存を信じなかった罪悪感からよそよそしい態度を取られる。

そうして、自分以外の誰もが前に進んでいることに絶望する。
島での生活中は生きることに必死であったし何もないからこそ夢想することも出来た。
だが、いざ現実に戻れば、自分が棒に振った時間の長さを突きつけられる。
あの時こうしていれば、もしこうなっていなかったら今頃は、といったタラレバの波に打ちのめされる。

恐らく、今後の人生生きているだけの補償をされ、便利で何もかもあるはずなのに、何もない島での生活の時の方が心には多くのものが溢れていた。
「彼女を失ったことは悲しい。だが、島ではずっとそばにいてくれた」
彼のこの後の人生がどうか幸あることを願うばかり。
唯