唯

テスの唯のレビュー・感想・評価

テス(1979年製作の映画)
3.7
その美しさから、男にも家族にも利用され、女からは嫉妬を集めるテス。
可愛いんだから金持ちの男に気に入られるでしょと奉公に出され、君は可愛い可愛いばかり言われて妊娠させられ、あんたは良いわよねちょっと可愛いからってと女から嫌われ、っていうね。

美しさ故の悪い面ばかりを引き寄せている様でもあるが、そんな中でも感情を起伏させることなく淡々と強い眼差しを湛え続ける。
これは、感情がピークになる瞬間をあえて映さない演出のために、テスの強さをより強固なものとして印象付けるところもある。

ろくでもない親がいると不幸になるなと改めて実感。
男達はテスを自分を飾るものだとか穴としか思っていないわけだけど、飲んだくれの親もまた、テスの稼ぎを完全に当てにしている。

テスは、過去のために自分を許せない。
そこには、自分が犯した罪がいつかバレるのではという怯えもある。
悪いことがあったのは神の裁きであり、自分が罪を犯したからというクリスチャンの考えは恐ろしいよね。
本当は何も関係ないのに自責の念に縛り付けられる。

自分でさえも過去の罪に囚われて、幸せになることを許せていないというのに、結婚相手もまた条件付きでしかテスを愛しておらず、その条件を満たしていないとわかるや否や手のひらを返してしまう。
当時は個人の感情より前に神があったのかも。
神や世間の尺度でしか物事の善悪を判断できないのではなかろうか。
許しを与えられない男の器の小ささや、女を物としか捉えていないが故の下卑た笑いに口あんぐりしてしまうわ。

男に頼って生きることを自らに許さず一人で生き抜こうとする様は立派でもあるが、やはり幸せになることを許可できないのだろうなと。
そうして引き起こる、タイミングの噛み合わなさが辛い。
自分のことでいっぱいいっぱいになるとさ、その時はその時の感情しか受け止められないのよね。
本当に大切なものに気がついた時には手遅れというよくあるパターン。
あとは、どん底を経験してやっと人に寄り添える様に、人に理解を向けられる様になる。

過去の女がいつまでも自分を愛してると思ったら大間違いだからな、という終わりかと予想したのに、テスはもっとハードモードだった。
彼女の人生で幸せを感じられる瞬間はどれだけ存在したのだろうか。

ナターシャキンスキーの美しさに打ちのめされる。
唯