まちゃん

斬るのまちゃんのレビュー・感想・評価

斬る(1968年製作の映画)
4.0
風が吹き荒ぶ上州の宿場町に現れた二人の男。空きっ腹の浪人、半次郎と旅のやくざ、源太。二人の目の前で小此木藩の城代家老・溝口が七人の若侍に斬られる事件が起こる。溝口は圧政で領民を苦しめた独裁者。正義に燃える若侍達は許せずに暗殺を計画したのだった。そして彼らの後ろ楯、次席家老・鮎沢。しかし、鮎沢には裏の顔があった。鮎沢の本性が現れた事により、若侍達は窮地に陥る。半次郎と源太は複雑なお家騒動に巻き込まれていく事になるのだった…。冒頭の宿場町に吹く風は黒澤明の「用心棒」を彷彿させる演出だ。実際、ストーリーも異物の二人の男が小此木藩内の問題で立ち回りながら活躍していく話なので「用心棒」のパロディ的な意図があると思う。主人公の二人は侍に嫌気が指してやくざになった男と百姓から侍になる事を目指す男。この二人と藩の内紛の対比により武家社会の残酷な実態、ひいては組織と個人というテーマを浮かび上がらせる事に成功していた。といっても重苦しい作品ではなく岡本喜八監督のテンポの良いユーモアのある演出で楽しめる。主演の仲代達矢も一般的なイメージと違い、飄々とした軽い演技が素晴らしい。傑作。
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