まちゃん

千年女優のまちゃんのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
3.9
30年前に人気絶頂の最中に忽然と姿を消した伝説の女優・藤原千代子。映像制作会社の社長・立花源也は彼にとって憧れの女優でもある、彼女のドキュメンタリーを撮る為に若いカメラマンを引き連れて藤原邸に訪れた。そこで語られる彼女の半生とは…。インタビューから回想シーンに移り変わり物語を展開していく。定番の手法だ。しかし、この作品はもう一つ捻った要素がある。主役が女優である事を最大限に活かした手法。現実の藤原千代子の人生を描いている筈がいつの間にか彼女の演じた映画の世界に移っていくのだ。虚実が渾然一体となり、立花もカメラマンも一緒に物語の世界の登場人物になっていく。もちろん物語の軸はある。それが戦時中に出会った官憲に追われる若い画家への恋。鍵を残して満州に渡って行った通称「鍵の君」。彼を追いかけて行った満州での映画撮影から女優としてのキャリアが始まる。そこから時代劇からSFまで時間も空間も自在に飛び越えながら「鍵の君」を追いかける千代子の人生。いつしか実人生での目的を越えて虚構の世界にいる事自体の重みが増えていく。「実人生」と書いたが女優にとっては「虚構」こそ人生なのかもしれない。
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