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エスターのRenのレビュー・感想・評価

エスター(2009年製作の映画)
4.5
9月でNetflix配信が終了するので、久々に再見してレビュー書くことにした。自分の好きな「お家にヤバい人がいるんですスリラー」の金字塔とも言える作品。歴史に残るのは当然。

『下女』『何がジェーンに起ったか?』『ミザリー』『ゆりかごを揺らす手』『危険な遊び』、挙げたらキリがないけど、家×危険人物サスペンスはいつの時代も面白い。今作は2時間あるが、体感時間はあっという間だった。
大きな窓ガラス、吹き抜けのフロア、積雪の森のロケーションも何もかもが怖い。作劇的に全てが意味を為して襲いかかる。

エスター(イザベル・ファーマン)の異常性が発覚するまでが早くて良い。それ以降も彼女の凶行大喜利の手数でぐいぐい物語を引っ張ってくれるので飽きることはない。
編集もかなり潔い。これ以上見せないでくれ〜と苦しくなる一歩手前でカットが割られるため、観ていられない胸苦しさは意外と無い(ある)。

子どもが、夫婦が、家族が、他人が怖い。
子どもは無垢の象徴とされがちだけれど、時には平気で大人よりも残酷になりますよ、それをちゃんと分かっていますか?と、製作者も思っているしエスターも思っているのが憎たらしいけど真理なので信頼できる。
親2人と子ども2人の間にそこまで強い繋がりが見られないのもまたリアル。もちろん双方愛し合ってはいるけど、物語の要素は大きく「両親の衝突」と「子どもの恐怖」に分けられることができる。それによって、大人が子どもを見る目線と、子どもが子どもを見る目線の違いが如実に感じ取れるのだ。

またそこには、男性が女性を、女性が女性を見る目線の性差もあるのかなと思った。男性の排除された舞台での格闘。鈍感すぎる夫の助けを借りずとも、家族を守ろうとする話になっていく。
母親が子どもを産み、母親が死産を経験し、母親がトラウマを負った家。究極の母親物語でもある気がした。

ブラックライトの演出はちょっとどうなの?とは思った。映像としてはかっこいいかもしれないけど....。
あとは、安易なそこにいそう→いなかった→いる!的なベタベタホラー演出とか、大きい音のジャンプスケアがちょっと一辺倒。そこをどうとるかでホラーとしての評価は変わるけど、自分は「ただ驚かせたいだけじゃん」とちょっと冷めてしまった感があった。
映画の総評としてはやっぱり大傑作。オチが有名すぎたけど、ここまでネタバレを踏まずに来られた未見の人は何も調べずに観てください!

その他、
○ イザベル・ファーマンがエスター役に起用された時点でこの映画は成功。ラストシークエンスでの説得力が半端ではない。
○ ケイト(ベラ・ファーミガ)が車で帰宅したとき、全くピントの合っていないエスターが窓越しに映っているのが良い。Jホラーっぽい。
○ ベストシーンは万力のところ。顔を歪めた。
○ エンドロール、さすがにフィンチャーすぎて面白い。隠しきれない『セブン』への憧れ。
○ ジャウム・コレット=セラ監督は最近だと『ジャングル・クルーズ』を撮りましたが、両方観た人ならある共通点に気がつくはず。
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