しおえもんGoGo

エスターのしおえもんGoGoのレビュー・感想・評価

エスター(2009年製作の映画)
4.0
エスターファーストキルを見た勢いで再視聴。

改めて見たけどまず子役の演技が非常に上手い。
エスターはもちろんだけど、マックスがとにかく可愛い上に上手いし、お兄ちゃんのダニエルも、何ならいじめっ子の女の子も、全員とにかく上手い。エスター以外の子供が自然な演技を見せるからこそエスターの不気味さが浮き上がってくる。

いかにもあどけなくいい子に見えるのに、じわじわと分かってくる不気味さ。
この映画を初めて見た時は全く前情報無しだったので、最初は「この子は超能力者とか悪魔とかそういう系?」と思ったほどだ。

次第に見せてくる狂暴さに、マックス達を言葉や恐怖で縛って配下に置く周到さ。そして母親に見せる陰湿極まりない精神攻撃。
見た目が子供だからこそギャップがえぐい。

母親が違和感を訴えるのに誰にも信じてもらえない様子も苦しいし、母親が酒に溺れてマックスを死なせかけた過去や、その時から続く夫との不和など、夫婦の問題も浮き彫りになってくる展開もジワジワとこっちの気持ちを重くする。

とにかく家族側に肩入れして、頑張れがんばれと思って見られるので、本来あるべきストレスだけを楽しむことができた。


以下ネタバレあります。





しかしこの映画のいい所は、その正体がわかった時の切なさでは無いか。
単なる「サイコパスな子供」じゃない所。

実は子供じゃなかったというのは確かに大きな驚きだけど、それが分かった後の彼女の行動を見ると、彼女の人生に同情してしまったからだ。

相手を利用するために子供として生きて来たわけだが、つまりは子供としか見てもらえなかったという事でもある。

実の子であっても10歳前後の子供と毎日一日中一緒にいたら疲れるだろうに、あれほど聡明なエスターが毎日学校で精神年齢が違い過ぎるガキどもの中に居させられるなんて、私だったら気が狂いそう。

着飾って父親に迫った時に確かに不気味ではあったが、同時に渾身の大人メイク(言い換えれば中身相応の恰好)で「不気味」と思われるのはどれほど傷つくだろう。
見た目は幼くても中身は成人女性で、性欲だって普通にあるし誰かと結ばれたいと思うのは当然で、そんな満たされない色んな欲求を壁に描くしかなかったエスターを考えると一人の女性としてとても悲しい人だ。

マックス達のかわいらしさや、エスターの精神攻撃のエグさでそれまで母親を応援していたけど、女としての喜びを謳歌する母親をことさら憎んだ気持ちを考えると切ない。「悲しき悪役」みたい。


その他
・アメリカのおうちって子供部屋に個別にお風呂ついてるのね
・両親がエスタ―に夢中になって焼きもち焼いたり、学校での奇行が恥ずかしくて嫌がるお兄ちゃんの気持ちがとても良く分かる。好奇心から鳩を撃ってしまって、罪悪感にビビってる顔とか滅茶苦茶自然。本当に普通の子だわ。無事回復して欲しい。
・違和感を覚える母親に肩入れするけど、それを信じない父親側の事情も分かるが、概して父親はポンコツ。
・マックスの聴覚障害を上手く双方が活用するシーンが良かった
・マックスの可愛さが観客の気持ちを一体化させてると思う
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